みうらじゅん氏は、1958年京都生まれ。イラストレーター、エッセイスト、ミュージシャン、ラジオDJなど幅広いジャンルで活躍。1997年「マイブーム」で流行語大賞受賞。仏教への造詣が深く、『見仏記』『マイ仏教』などの著書もある彼が、遺影写真について考察する。
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現在、一般的な葬儀における遺影の大きさは四つ切りサイズ(縦305ミリ、横253ミリ)がポピュラーらしい。スナップ写真からの引き伸ばしが多く、なかなかそれ以上大きくするのは難しいのが現状だったが、最近では、変化が出てきたという。
20年前までは32インチもあれば「大きッ!」といわれていたテレビが、今では40、50インチが当たり前になったように、遺影にも大型化の波がきているのだ。
確かに、遺影が故人から参列者への「最後の挨拶」の重要アイテムだということを考えると、四つ切りサイズでは物足りない。
私は葬儀ってのは人生最後のイベントだと考えている。同じく人生の一大イベントである結婚式では、かなり力を入れたはずだ。ところが、葬儀は肝心の本人が不在なんだから生前にじっくり考えておく必要があるんじゃないか。
自分って存在が生きていた証を見せつけたいよなあ。で、こんなことを考えた。
葬儀場の入り口で3Dメガネを配って、僧侶の読経が佳境に入ると、「メガネをおかけください」って表示が祭壇に出る。メガネをかけた参列者に目の前に飛び込んでくるのが、個人の在りし日の姿……。
実は今、3Dの絵はがきを集めている。印刷の上にデコボコしたうっすいプラスチックが張ってあって、立体に見える絵はがき。「レンチキュラー」っていう印刷法でけっこう昔からあるんだけど、これは遺影にも応用できそうだ。いや、この方式なら、名刺サイズくらいの3D遺影を作って、参列者に香典返しで渡すことも可能だ!
故人だって自分のことを忘れないでいて欲しいだろう。それに集めてみたいでしょ、3D遺影カード!! カードホルダー作って、時々、そのホルダーをしみじみ眺めては、亡くなった友人知人に想いを馳せる。
レンチキュラー印刷の費用を調べると、ポストカード大のものを千枚作るなら、1枚あたり500円前後でできるようだ。
最初にやるのは誰だ!?
※週刊ポスト2011年10月7日号