シネコンに押されて、東京都内でミニシアターの閉館ラッシュが続く中、本の街・神保町にシニアを中心にファンを増やす名画座がある。それが「神保町シアター」。だが、歴史の浅い神保町シアターの人気が高まっているのはなぜか――。プログラム編成の面白さ、新しく快適な設備も魅力だが、さらに3つの理由があった。
理由その1:「一緒に笑って、泣いて。拍手率は都内No. 1」
「あるお客様が“ここはみんなで一緒に笑えるのがいいよね”とおっしゃったんです。確かにこの劇場では、お客様がよく笑いよく泣き、気持ちのよい拍手も起こります。一緒に観ることで観客が共感し合った、昔の映画館の楽しさが健在なんですよ」(佐藤奈穂子副支配人)
副支配人は都内の映画館を頻繁に回っているが、他では拍手はそうそうないと話す。これまで同劇場で最も盛大な拍手が起きた作品は、加東大介演じるギューちゃんが、田舎から出てきて出世する『大番』(10月にも上映)。主人公への声援だった。
理由その2:「リクエストすれば応えてくれそう」
昨年からは、スタッフが「はみだし映画祭」と呼ぶモーニングショーやレイトショーも時折開催。トークショーもこまめに行ない、チラシを毎月約1400人に郵送するなどファンサービスも手厚い。
しかし、この劇場の魅力は何といっても、若いスタッフが心安く、いえば応えてくれそうな空気があることだろう。観たい作品をリクエストしてくる客もいれば、菓子を手土産に持ってくる常連客もいるという。ロビーでは、スタッフと楽しげに話をする客の姿があった。
理由その3:「映画以外の楽しみも盛りだくさん」
神保町という街の魅力も大きい。地下鉄3線が通るうえ、若者に占拠されていないので気軽に立ち寄れる。
「神保町は昔から大学が多く、映画や食事が楽しめる街でした。学生時代にここで遊び、リタイア後にまた足が向くようになったというお客様もいらっしゃいます」(佐藤副支配人)
古書店を覗いたり、一杯飲んだり、2駅先の日本橋三越で買い物をしたりと、映画館を出た後の楽しみも多い。「暇だから映画でも観に行くか」と昔の感覚で出向き、十二分に楽しめるのが、神保町シアターなのだ。
※週刊ポスト2011年10月7日号