遣唐使や遣隋使がもたらし、江戸時代の煎茶開発を経て、食習慣に根づいた緑茶。その背景には古来から囁かれてきた医学的な効用が見え隠れする。昔は薬として、今では健康維持に良い嗜好品として、時代を超えて広く愛されるのが緑茶の特徴だ。
鎌倉時代の僧・栄西は『喫茶養生記』で茶の効用を日本で初めて明確に著し、『吾妻鏡』には鎌倉幕府の三代将軍・源実朝の二日酔いを栄西が茶で治したとの記述もあるほど。その栄西の言葉「茶は養生の仙薬なり」を彷彿とさせるような緑茶の話題が今年の春に沸き起こったのをご存じだろうか?
それが深蒸し茶だ。静岡県掛川市で行われている大規模疫学調査「掛川スタディ」に端を発し、お茶のまちが概してがんによる死亡率が低いことなどを考察。こうした健康維持に効果的と目される緑茶の栄養成分をより豊富に摂取できる方法が紹介され、大反響を呼んだ。
今年に入り厚生労働省が発表した日本人の平均寿命は女性が86.39歳(世界1位)、男性が79.64歳(世界4位)。狭い国土に人口が多く、喫煙者も先進国では低い方ではないなどの矛盾を抱えながら、世界的長寿国になって久しい。
その理由に、医療の充実や食生活とともによくあげられるのが緑茶の飲用習慣であることも忘れてはならない。日本では健康志向の緑茶飲料が次々登場しているが、そんな中ここにきて注目を集めているのが「ガレート型カテキン」という成分だ。
緑茶の健康成分の1つである緑茶カテキンには8つの種類があり、うちガレート基と呼ばれる分子構造を持つ4種類のガレート型カテキンが「脂肪の吸収抑制」や「LDL(悪玉)コレステロールの低下」に作用することが明らかになった。
※週刊ポスト2011年10月7日号