中学校の体育教師だった菊池和子さん(77)が50年にわたって指導している“きくち体操”はほかの体操やエクササイズとはまったく異なる。自分の体に意識を向ける。ていねいに動かす。たったそれだけの、とてもシンプルな体操なのに、自分の体が、“生きるため”の体に着実に変わっていく。この体操がいまR40女性にブームだ。今年5月に開催された、「きくち体操講演会」(雑誌「いきいき」主催)には、日本全国から1500人もの参加者が詰めかけた。
医療が発達し、平均寿命が83才まで伸びた今(2011年WHO発表)、40代は折り返し地点。「人生の後半をきちんと生きるには、覚悟と筋肉が必要なんです」と、力強く語る菊池さんからの緊急提言。
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前にはちょっとダイエットすればなくせたウエストの肉が落ちにくくなった。体力がなくなって、階段の上り下りがおっくうになった…「年をとったら、当たり前」と思っていた、そんな体の変化に、菊池さんは、真っ向から「NO!」を突きつける。
「自分の体のことなのに、『太っちゃった』と、まるで他人事のようにいう人がいますね。でも、それは『なっちゃった』のではない。そんな体に“した”のは、誰でもない、自分自身。それを認めて初めて、自分の体と向き合うことができるんです」と、菊池さんはいう。
確かに、老人でも、シャキシャキ歩く人はいる。反対に、若くてもオバサン体型になり、顔を合わせれば、「腰痛が」「膝が」しかいわない人もいる。
「『老いる』と『衰える』は、決してイコールではありません。“年はとっても、絶対に衰えない”。40代のいま、そう決めておくことで、60代以降の人生が、まったく違うものになるのです」(菊池さん)
なぜ60才がターニングポイントになるか。それは、77才という年齢を迎えた菊池さん自身の経験から、わかったことだという。
「例えば、歩くという能力は、赤ちゃんのころ、ハイハイして筋肉を育てて、ふにゃふにゃの足の裏が地面をつかむ感覚を覚えて、自分で獲得したすごい“能力”なんですよ。60才で高齢者の仲間入りをして以降、何もしなければ、せっかく身につけた能力は、どんどん失われていきます。ですから、ここで赤ちゃんのころにしたのと同じように、あらためて脳と体をつなげて、筋肉を育て続けてゆくことが必要なのです」(菊池さん)
※女性セブン2011年10月13日号