1980年代後半から1990年代前半にかけて活躍したロックバンド、ザ・ブルーハーツ。彼らのヒット曲が相次いでCMに使われ、CMソングとして再び注目されている。
クロスカンパニーのファッションブランド「earth music&ecology」の秋の新CMでは、宮崎あおい(25)が『リンダリンダ』を弾き語りで歌う。同ブランドでは昨年春から宮崎がザ・ブルーハーツの曲を歌うCMをスタート。放映後、商品の売り上げが1.5倍になったそうだ。もうひとつはNTTドコモのスマートフォンのCM『walk with you「Beeカラ」篇』。渡辺謙(51)がギターを弾きながら、『情熱の薔薇』を熱唱する。渡辺が派手なアクションでまさに“情熱的に”歌う姿が、バカ受けしている。
このふたつのCMの演出について、CM総合研究所代表の関根建男さんはこういう。
「歌手ではない宮崎さんが男っぽいザ・ブルーハーツの曲を歌うことで、宮崎さんのイメージとのギャップを生み、それが彼女の新しい魅力となり、CMのヒットにつながったといえます。歌があまり上手ではないところも、かえってナチュラルさや親近感を視聴者に感じさせています。渡辺謙さんのCMも、歌のイメージがない彼が歌うところにインパクトがあり、それが話題性につながっています」
ふたりが歌う曲は、いずれも前向きな歌詞が印象的だ。ザ・ブルーハーツといえば、ボーカルの甲本ヒロト、ギターの真島昌利らが率いた、人気ロックバンド。甲本の低音を効かせた独特の歌い方や、ド派手なパフォーマンス、そしてメッセージ性の強い楽曲で、爆発的な人気を呼んだが1995年、惜しまれつつ解散した。それから16年後、いま再び注目を集めているのはなぜか?
「彼らの楽曲は、シンプルで力強く前向きな歌詞や、パワフルな歌声が特徴。耳に残りやすく、15、30秒という短い時間でメッセージを伝えるCMに適しています。1980年代に彼らの曲を聴いていた世代には懐かしさを感じさせ、 一方、CMで彼らの曲を知った若い世代にとっては、最近のJ-POPにはない骨太な楽曲がかえって新鮮に聞こえるのではないでしょうか」(関根さん)
それに加えて、今年3月の東日本大震災で心に深い悲しみを負った被災者や、落ち込んだ多くの日本人の心を奮い立たせる強いパワーを感じさせるという。
「力強い楽曲や歌詞は、震災後の日本人を励まし、勇気づける力があるのではないでしょうか。 今年4月から放映された、漫画家・井上雄彦さんが宮本武蔵を描く日清食品のカップヌードルのCMでも、 甲本さん、真島さんがメンバーのザ・クロマニヨンズの曲が使用されました。『この国には、底力がある。』のコピーとともに、震災復興を応援するCMとして高い評価を受けています」(関根さん)