今の中国は日本の戦国時代と同じような群雄割拠の状況になっている。地方の市長や共産党委員会書記クラスが非常に力をつけ、互いにしのぎを削っているのだ。翻って中国の指導者が出世する条件とは何か? 大前研一氏が解説する。
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ルールはただ一つ、経済繁栄することだ。なにしろ、中国の市長は年7%以上の経済成長を継続しなければならず、7%を2年連続して下回ると罰則を受け、3年連続して下回ったらクビになる。
その代わり、経済成長するためには(犯罪でなければ)手段は問われない。農民から土地を収奪して商業地に変えたり、世界中から企業を誘致したり、それでも足りなければ口八丁で銀行を丸め込んで借金をしたり、とにかく資金を集めてきて経済繁栄さえすれば評価されるのである。
そういう極めて大きな裁量を与えられているから、市長たちはみんな自分の頭で懸命に経済成長の方策を考えるようになり、それが足し算されて中国全体の繁栄につながっているのだ。
そして、これは国家リーダーを育成するための仕掛けにもなっている。中国は、地方で実績を残した者が引き上げられていき、最終的に国のリーダーとなる。江沢民しかり、朱鎔基しかり(ともに上海市長を務めた)、胡錦濤の後継者に決定している習近平しかり(福州市共産党委員会書記、福建省長、上海市党委書記などを歴任)である。
業績を上げ、汚職に巻き込まれず、市民の暴動を押さえ込む。この三拍子揃った人間が、党中央政治局の常務委員として最後に北京に乗り込んでいくのである。
※週刊ポスト2011年10月7日号