この10月1日、全国で完全施行された暴力団排除条例を追い風に、警察当局が「紳助ショック」で揺れる芸能界に攻勢をかけている。
暴排条例により、暴力団関係者と頻繁に会うなど、利益供与の関係にある事業者は「密接交際者」と認定され、都道府県公安委員会による「関係清算勧告」に応じなければ名前が公表される。つまり、社会的に強制排除される重いペナルティが科せられるのである。
本誌スクープでその存在が明るみに出た「丸の内署芸能特捜班」は、暴排条例の施行と同時に正式発足した。だが、9月中からすでに浄化作戦を精力的に行なっていたのは本誌既報の通りである。これに戦々恐々なのが、タレントや歌手、芸能プロダクション。
芸能プロ関係者が当局の執拗なプレッシャーを証言する。
「有名芸能人が多数所属する大手芸能プロ社長が銀行口座を新規開設しようとしたところ銀行から拒否され、その芸能プロ自体の口座も一部止められたようだ。当局が金融機関に対して、社長と暴力団の繋がりについて情報提供し、銀行が“反社(反社会的勢力)”の認定をしたと聞いている。口座が開設できないだけでなく、融資枠にも制限がかかるので事業者としては致命的。このような芸能プロの幹部が業界に複数でてきている」
もちろん当局は真綿で首を絞めるやり方だけで「芸能界浄化」を進めるつもりではない。すでに特捜班が本格的な事件化に向けて着々と捜査を進めている案件がある。都内の不動産会社元会長に対する暴行事件である。
9月1日未明、金銭トラブルに端を発した諍いで、元会長が自宅マンション前で3人の男からすさまじい暴行を受け、右目は失明寸前、前歯はすべて折られるという凄惨な事件が起きた。この暴行事件への関与が疑われている重要人物こそが、元山口組臥龍会幹部のK氏というのである。K氏は1997年にアイドルのHと結婚。その後離婚したが、Hは再婚して母でありながら芸能界に復帰してグラビアなどで活躍している。
「9月半ばにも自ら警察署に出頭する約束だったが、結局、Kは姿を現わさなかった。ただし居所は把握している」(警視庁捜査関係者)
当局は暴行事件捜査を突破口に、裏社会と芸能界に精通していたK氏の人脈を明らかにしようと狙っているようである。
K氏の知人がいう。
「特に、アイドルHとKを引き合わせたキューピッド役の俳優Tとは10数年来の仲。その縁で、タレントや女優との交遊が広がり、豪華なプレゼントを贈られた芸能人もいるという」
そして、K氏の芸能界人脈は歌手や元スポーツ選手へとさらに広がりを見せ、K氏は警視庁から「芸能界と裏社会を繋ぐ重要人物のひとり」としてマークされている。
※週刊ポスト2011年10月14日号