男と女にすれ違いはつきもの。カネの貸し借りやモノの売り買いにも、いざこざは日常茶飯事だ。とにかく人間の社会活動にはトラブルがついてまわる。しかし、いざそれに巻き込まれると、法の下にどう立ち振る舞えばいいか、一般人は戸惑うばかり。
そこで頼りになるのが“街の法律屋さん”である行政書士だ。全国に4万人の国家資格者が、プロの視点で授けてくれる文書と知恵は、些細なトラブルでも円満に解決に導いてくれるのだ。
たとえば、不倫の慰謝料を請求する場合はどうか?
会社員のB氏(41)は妻の浮気相手である男性に慰謝料を請求し、100万円を支払ってもらうことまでは合意した。ところが、相手は「自分は20代のフリーター。金がないから月1万円の100回払いにしてくれ」といってきた。
100回払いでは完済までに10年近くかかる。相手が10年間も約束どおり支払い続けるという保証はないし、10年間も問題を引きずるようでとても一件落着という気分にはなれない。
「不倫での慰謝料なら、可能な限り一括で、長くても2年以内に完済させるのが一般的でしょう。その上で、相手と取り交わす和解契約書を『公正証書』にします」(行政書士・田島隆氏)
公正証書とは、法務大臣に任命された「公証人」が法律に従って作成する公文書のこと。公証人は公正証書作成などの手数料収入で「公証役場」を経営しており、全国で約500人の公証人が約300の公証役場で執務している。
元公証人で、現在は弁護士である北野俊光氏が話す。
「公正証書を作成するメリットのひとつは、公文書になるので高い証明力があると見なされ、万が一裁判になった時に証拠として使える点です。もうひとつは、債務不履行の時は強制執行してもいいと記載しておけば、裁判所の判決なしに債務者の銀行口座を差し押さえることができる点です。また、こうした強制力を持つため、相手にとっては心理的負担が大きく、債務を履行する義務感が高まります」
※週刊ポスト2011年10月14日号