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野田首相の「政治空白作らず」は当分解散総選挙しないの意味

 永田町では「政治空白」なる言葉がよく使われる。これは一体なんなのか? その真の意味を、東京新聞・中日新聞論説副主幹の長谷川幸洋氏が解説する。

 * * *
 永田町用語の一つに「政治空白」という言葉がある。たとえば野田佳彦首相は9月22日夜、国連総会に同行した記者団との懇談でこう述べた。

「(衆院解散・総選挙を)少なくとも今はやる時期ではない。経済情勢も不安定感が出てきている。原発事故の収束も含めて今、復興のために政治空白を作るべきではない。近い将来にやることはない」(毎日新聞9月24日付)

 野田は8月29日の民主党代表就任後の会見でも同じ趣旨の発言をしている。では、政治空白とはなにか。

 一般には与野党や与党内での政治抗争が激化して、国会審議が進まず、国政が停滞する状況を指している。国民から見れば、政権が掲げる政策に賛成であれ反対であれ、議論に決着をつけて具体的に政策を動かしてもらうために国会議員を選んでいるのだから、膠着状態は困った状況だ。

 ところが政治家は「政治空白」という言葉を都合よく使い分ける。

 先に挙げた野田の場合は「当分、解散総選挙はしませんよ」という意味だ。解散総選挙となると当然、その前後は国会審議ができない。そんな状況を「政治空白」と言っている。

 だが、衆院の多数派を握った政党が首相を選ぶのだから、本当はこれこそがダイナミックな「政治」そのものではないか。言い換えれば、解散総選挙こそが国民がときの政権に対して最終的な評価を下す最高度の政治プロセスなのだ。

 そういう視点からみると、野田が「当分は解散総選挙をしない」という趣旨で「政治空白を避ける」と言ったのは、野田の「政治」に対する基本的認識をよく表している。

 野田は国民が最高度の政治判断を下す機会を「政治空白」と言っている。もっと言えば「それは政治ではない」と思っているふしがある。野田にとって、政治とは自分たち権力者の営みであって、国民が政策と議員を選ぶ機会は「空白期」なのだ。

※週刊ポスト2011年10月14日号

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