竹下正己弁護士の法律相談コーナー。今回は「故郷にある墓を、移すにはどうすればいいでしょうか」と以下のような質問が寄せられた。
【質問】
生まれ故郷にある両親の墓を、東京近郊の墓地に移したいと考えています。地震で墓が被害に遭ったこともあり、現在私たち子供が住んでいる町からも近い、安全な場所に移したほうが安心ですし、墓参にも行きやすいからです。墓を移すにはどのような手続きが必要でしょうか。
【回答】
墓を移す作業については、墓の利用契約と、墓地経営や埋葬について定めた「墓地、埋葬等に関する法律」(墓埋法)の規定を検討する必要があります。まず、通常墓といっているのは、お寺や霊園業者などの墓地経営者から墓地の一区画を借り、そこに遺体を埋葬したり、焼骨を埋蔵するために設置した納骨棺や墓石などの施設(「墳墓」)のことです。
お墓を移すには、墓地経営者との間で成立している使用区画に関する利用契約を解消し、墳墓を整理して、墓地経営者に返す必要があります。そこでまず、その処理方法について墓地経営者と協議しなければなりません。さらにお墓のあるお寺の檀家になっている場合は、檀家を辞めるということになります。
墓埋法では、遺骨を取り出して他の墓地に移すことを「改葬」といい、同法第5条で市町村長の許可を受けることを求めています。具体的には、墓地のある市町村の役場に「改葬許可申請書」を提出して行ないますが、申請書の書式は役場にあります。
その申請に際しては、改葬しようとする遺骨が墓地に埋蔵してあることの証明書を提出することが必要で、これは墓地経営者に作成してもらわなければなりません。この他、申請書の記載事項には、改葬先の特定があります。そこであらかじめ改葬先の墓地を決めておくことが前提として必要になります。市町村によっては、改葬先の受け入れ証明書の提出を求めるところもあります。
要するにまず改葬先を決め、今の墓地経営者から遺骨の埋蔵の証明書をもらい、役場から改葬許可を受け、遺骨を取り出し、改葬後の墳墓を撤去して使用区画を整理して墓地経営者に返し、遺骨は改葬先の墓地に納骨するという段取りになるでしょう。
※週刊ポスト2011年10月14日号