国際情報

北朝鮮 金正恩体制への移行で3回目の核実験迫るとの指摘

 父・金正日が心血を注いで開発してきた核兵器と弾道ミサイル。息子・正恩への権力継承劇は、その完成をもって行なわれる。今そう推測せざるを得ない情報が飛び交っている。近く北朝鮮で3回目の核実験が行なわれるというのだ。しかも過去2回行なわれた核実験とは異なり、その性能と技術は、格段に向上しているという。軍歴なき大将が手にする「核とミサイル」。6か国協議が膠着する中、危険な開発は秘密裏にそして、着実に進んでいる。

 元韓国国防部北朝鮮分析官の高永喆氏がレポートする。

 * * *
 北朝鮮が3回目の核実験を行なう可能性が高まり、米韓の情報機関が神経を尖らせている。

 韓国の情報関係者によれば、過去2回行なわれた場所の周辺では、核実験に向けた垂直・水平坑道の掘削作業がすでに終わっており、坑道の入り口周辺などでは、人や車が今も活発に動き回っているという。

 また、9月には、何度も訪朝して北朝鮮の核開発の実態をよく知る米ロスアラモス国立研究所の元所長で、核物理学者のジークフリード・ヘッカー氏が、ウィーンでの講演で、北朝鮮がミサイルに搭載可能な小型核弾頭を開発するための3回目の実験が近く行なわれるだろうと語った。

 北朝鮮は過去2006年10月と2009年5月の2回にわたって核実験を行なっている。1回目の核実験は、爆発による地震波の測定から咸鏡北道吉州郡豊渓里の地下核実験施設で実施されたと推測され、米地質研究所(USGS)が観測したマグニチュード(M)は4.2、日本の気象庁の観測ではM4.9であった。この観測された地震波から爆発出力の規模を米国はTNT火薬換算で0.5~5kt、日本では0.5~1.5kt程度ではないかと推測した。

 一方、2009年5月の2回目の実験ではUSGSはM4.7を観測、気象庁はM5.3を観測した。実験場所は1回目にほど近い場所とされる。

 マグニチュードの数値が0.5違うと放出エネルギーは5倍になると言われる。すなわち、2回目の実験は最初の爆発出力に比べ、5倍程度威力が増したことになる。

 2度の実験を失敗と見る専門家もいるが、爆発規模が1回目の5~6倍とした2回目の実験は北朝鮮の目標に達し、成功だったと思われる。

 実験を失敗とするのは、北朝鮮の核爆弾が広島に投下されたリトルボーイや、長崎型のファットマンのような大型の原子爆弾と考えるからである。ウラン原子爆弾のリトルボーイは重量4.4t、出力は15kt、プルトニウム原子爆弾のファットマンは重量が4.6tで、その出力は22ktを記録した。それに比して、2回目実験の出力が5~6ktだったため失敗と見られたのであろう。

 だが、北朝鮮の核爆弾開発の目標は弾道ミサイルに搭載するための核弾頭である。ミサイル搭載には重量を500~700kgまで縮小しなければならない。

 北朝鮮はすでに核弾頭の小型化に成功しているとの情報もある。小型化の基準である1000kgの壁を突破して、ミサイルに搭載できる初歩的な弾頭は作ることができると言われている。

 韓国国防部の金寛鎮部長は今年6月13日の国会国防委員会全体会議で「(核実験から)期間も長く、小型化や軽量化に成功した時期だと判断している」と明らかにした。

 この小型化した核弾頭の精度をあげるために3回目の核実験を行なう可能性があるというのが、米韓の情報機関および軍部の見方なのである。

 小型化の精度をあげるということは、爆発出力を強化することで、核融合反応を速めることだ。核融合させるには重水素と三重水素の混合ガスをタイミングよく注入しなければならず、特殊な技術が必要とされる。

 この技術を実用化するまでには何度も実験を繰り返さなければならない。過去2回の実験は核融合技術を高めるためだったと言えよう。

 2010年5月、北朝鮮は「独自の核融合技術を開発した」と発表し、同年6月には韓国の核安全技術院が核分裂によって発生する放射性キセノンの大気中の濃度が平時の8倍になったことを明らかにした。そして北朝鮮が水素爆発開発のための可能性を示唆したのである。水素爆発は融合の結果、放出のエネルギー量が多いため大量破壊兵器に用いられることは周知の事実だ。

 北朝鮮がこれらの技術と核の精度を高めるためには、今後3回どころか、数回の実験が繰り返されると考えるべきだろう。

※SAPIO2011年10月26日号

関連記事

トピックス

大谷が語った「遠征に行きたくない」の真意とは
《真美子さんとのリラックス空間》大谷翔平が「遠征に行きたくない」と語る“自宅の心地よさ”…外食はほとんどせず、自宅で節目に味わっていた「和の味覚」
NEWSポストセブン
逮捕された村上迦楼羅容疑者(時事通信フォト)
《闇バイト強盗事件・指示役の“素顔”》「不動産で儲かった」湾岸タワマンに住み、地下アイドルの推し活で浪費…“金髪巻き髪ギャル”に夢中
NEWSポストセブン
「武蔵陵墓地」を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年12月3日、撮影/JMPA)
《曾祖父母へご報告》グレーのロングドレスで参拝された愛子さま クローバーリーフカラー&Aラインシルエットのジャケットでフェミニンさも
NEWSポストセブン
2021年に裁判資料として公開されたアンドルー王子、ヴァージニア・ジュフリー氏の写真(時事通信フォト)
《約200枚の写真が一斉に》米・エプスタイン事件、未成年少女ら人身売買の“現場資料”を下院監視委員会が公開 「顧客リスト」開示に向けて前進か
NEWSポストセブン
指示役として逮捕された村上迦楼羅容疑者
「腹を蹴れ」「指を折れ」闇バイト主犯格逮捕で明るみに…首都圏18連続強盗事件の“恐怖の犯行実態”〈一回で儲かる仕事 あります〉TikTokフォロワー5万人の“20代主犯格”も
NEWSポストセブン
海外セレブの間では「アスレジャー
というファッションジャンルが流行(ケンダル・ジェンナーのInstagramより)
《広瀬すずのぴったりレギンスも話題に》「アスレジャー」ファッション 世界的に流行でも「不適切」「不快感」とネガティブな反応をする人たちの心理
NEWSポストセブン
遠藤敬・維新国対委員長に公金還流疑惑(時事通信フォト)
《スクープ》“連立のキーマン”維新国対委員長の遠藤敬・首相補佐官が「秘書給与ピンハネ」で税金800万円還流疑惑、元秘書が証言
NEWSポストセブン
2018年、女優・木南晴夏と結婚した玉木宏
《ムキムキの腕で支える子育て》第2子誕生の玉木宏、妻・木南晴夏との休日で見せていた「全力パパ」の顔 ママチャリは自らチョイス
NEWSポストセブン
雅子さま(2025年10月28日、撮影/JMPA
《雅子さま、62年の旅日記》「生まれて初めての夏」「海外留学」「スキー場で愛子さまと」「海外公務」「慰霊の旅」…“旅”をキーワードに雅子さまがご覧になった景色をたどる 
女性セブン
ケンダルはこのまま車に乗っているようだ(ケンダル・ジェンナーのInstagramより)
《“ぴったり具合”で校則違反が決まる》オーストラリアの高校が“行き過ぎたアスレジャー”禁止で波紋「嫌なら転校すべき」「こんな服を学校に着ていくなんて」支持する声も 
NEWSポストセブン
24才のお誕生日を迎えられた愛子さま(2025年11月7日、写真/宮内庁提供)
《12月1日に24才のお誕生日》愛子さま、新たな家族「美海(みみ)」のお写真公開 今年8月に保護猫を迎えられて、これで飼い猫は「セブン」との2匹に 
女性セブン
石橋貴明の近影がXに投稿されていた(写真/AFLO)
《黒髪からグレイヘアに激変》がん闘病中のほっそり石橋貴明の近影公開、後輩プロ野球選手らと食事会で「近影解禁」の背景
NEWSポストセブン