今年、未曾有の自然災害が日本列島で猛威をふるい、人々はその恐ろしさを身をもって知った。だが、それでも自然は時に人智を超えた美しさを魅せてくれる。
9月末に発売された写真集『地球の神秘』(新人物往来社刊)には雲、太陽、星などが地球をキャンバスに織りなす壮大なスケールの“美”が収められており、それはまさに息を呑むほどに美しい。
同写真集に紹介されている、ある特定の条件下でしか起こらない脅威の自然現象について、いくつか解説しよう。
【海割れ】
潮流によって堆積した砂礫が、干満時の差が最も大きい時期の干潮時に姿を現わすことにより、まるで海に道ができたかのように見える現象。韓国の西南端に位置する珍島の回洞里(フェドンリ)では、対岸にある茅島(モド)まで、幅約40m、長さ約3kmにわたる道が、潮が満ちるわずか1時間ほどの間だけ出現する。
【サンピラー】
日の出や日没の際に、太陽の光が大気中に散在する氷晶や巻雲などの中を通過するときに反射し、太陽から垂直に柱が伸びているかのように見える現象。太陽だけでなく、月でも同様の現象を見ることができる。太陽の光が反射・屈折することによって見られる現象は、他に太陽が複数あるかのように見える「幻日」や、地平線をはさんで対称の位置に太陽が見える「映日」がある。
【ブロッケン現象】
見晴らしの良い開けた山の頂で、太陽を背にして前方の濃い霧の壁を見ると、その霧に自分の影が大きく映る。影のまわりには神々しい虹色の光輪が浮かび上がり、ドイツではブロッケン山で度々目撃されることから「ブロッケン現象」、日本では阿弥陀の来迎にたとえ「御来迎(ごらいごう)」と呼ぶ。霧粒が光を後方に回折させ、それによりできた光象が、さらに反射されることによって起きる。
※週刊ポスト2011年10月14日号