ヨーロッパの芸能界では「サウス・オブ・アルプス」という言葉が流布している。アルプスの南に行くと、興行が完全にマフィアにコントロールされているという意味だ。金沢工業大学虎ノ門大学院教授の北谷賢司氏はこう話す。
「いまだに地下勢力の力が強い。U2やマドンナ、ポール・マッカートニーなどの世界中の興行権をもち自社でイベントを手掛ける大手イベントプロモーター会社でも、イタリアとスペインでは、ローカルの興行主に権利を売ってしまうほど。
マフィアからの脅迫などのトラブルを避けるために、細かいことには目をつぶっている状態です」
興行利権のほか、イタリア・マフィアの大きな資金源になっているのが麻薬。その取引をめぐっても有名人とのつながりが生まれる。
イタリア4大マフィアの一つ「カモッラ」のボスだった男が、今年イタリア紙のインタビューを受け、1980年代にマラドーナがナポリでプレーしていた時代を振り返り、
「私はマラドーナのコカイン提供者だった。マラドーナはパーティ、ドラッグ、売春婦に明け暮れる生活をしていた」と明かしている。
マラドーナ自身、1996年のスペイン紙のインタビューでこう語っていた。
「いつも北(所属するナポリは南)に勝っていたから、マフィアは僕をすごく気に入っていた。ドラッグは至るところにあって、僕には特別にトレーに乗せて勧めてきた」――まさにズブズブである。
※週刊ポスト2011年10月14日号