望月昭さん(47)は、ドラマや映画にもなったベストセラーコミックエッセイ『ツレがうつになりまして。』(細川貂々作、幻冬舎刊)の“ツレ”さんである。IT企業のスーパーサラリーマンだった彼が、ある日突然「死にたい」といいだした、というエピソードは、よく知られている。その後、“ツレさん”は会社を辞め、うつ病と診断されて投薬治療もはじめた。
望月さんはいかにしてうつ病と付き合ったのか? 10月8日から映画の公開が開始されたが、現在は育児を引き受ける一方、エッセイストしても活動する望月さんが当時を振り返る。
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何かというと闘病、というけれど、ふり返って思うのは、何もうつに立ち向かって闘病しなくていい。病気のせいにしてしばらく社会から逃げる、つまり“逃病”もありなんじゃないかって思う。
気分や調子に波のある病気だから、とにかく焦らないこと、まわりと比べて自分はダメ人間だと思いがちだけど、それもよくない。ともかく無理して頑張らないで、と経験からいいたいです。
具体的には、一心不乱に集中してできる、たとえば水まわりをピカピカに磨くとかが、いいリハビリになります。相棒の勧めで、愚痴を日記につけたりもしました。同じことばっかり何度も書いてるからちっともよくなってないと思っていても、後で読み返すと確実に快復していく自分がわかりました。
ぼくの場合は、うつで休職という選択ができない会社で、仕事を失ったことを当時すごく不幸だと思ったんですが、そのおかげでいまの自分の存在があるのはまぎれもない事実です。子供を授かり、主夫という選択をして子育てに深くかかわることができ、文章を書く仕事をしていることを、本当によかったと思えます。
うつにならなければ、そんな自分には巡りあわなかったし、いまはなかったんですから。
※女性セブン2011年10月20日号