「今回の条例は法の下の平等を無視し、法を犯してなくても当局が反社会的勢力だと認定した者には、制裁を科すという一種の身分政策だ」
10月2日付、産経新聞の社会面に「異例」のインタビュー記事が掲載された。発言していたのは日本最大の指定暴力団山口組組長・篠田建市(通称・司忍)氏(69)。短髪に鼻の下には短く揃えられた口ひげ、薄紫色の和服を纏った篠田氏の写真も掲載され、話題となった。
篠田氏が問題視しているのは、10月1日に東京都と沖縄県で施行された暴力団排除条例(以下、暴排条例)だ。すでにこの2都県以外では同条例は施行されており、これで全都道府県での施行となる。
産経新聞の紙面では600字弱で篠田氏のインタビューはまとめられているが、インターネットの記事では、「上」「下」に分けて、計8000字ほどの一問一答形式で掲載されている。要約するとざっとこんな感じだ――
安藤隆春警察庁長官(62)の号令の下、警察は暴力団、特に山口組の弱体化を目指しているが、篠田氏は組の解散についてはきっぱりと否定。山口組がなくなれば、収入源を失った3万人とも4万人ともいわれている若い組員や家族が路頭に迷い、強盗や窃盗といった粗悪犯が増えると指摘した。さらには、山口組は暴力団のなかでは「紳士的」で、覚醒剤や不良外国人との接触を厳しく禁じているとし、海外マフィアの勢力拡大の歯止めになっているとも語っている。
そして最後に篠田氏は、暴力団排除の動きは警察の都合で、背景には警察OBの天下り先を増やそうとの思惑があると猛反論した。
一度、篠田氏に会ったことがあるというノンフィクション作家で暴力団に詳しい溝口敦氏も、「彼は一般人としても通用する常識がある」といい、今回の発表でも「的を射ている部分もある」と話す。
「全てのいい分が正しいわけではもちろんない。彼がかかわっていないといっても、実際には国内の麻薬、とりわけ覚醒剤の流通は暴力団が仕切っていますから。ただ彼がいうように、暴力団対策と称して警察OBの天下り先の企業ができているという見方はある程度妥当性はあると思います」(溝口氏)
※女性セブン2011年10月20日号