野田政権で法務大臣を務める平岡秀雄氏の秘書官に任官された48歳の男性が過去に補助金詐欺で有罪判決を受けていたことが本誌・SAPIOの報道で明らかになった。しかもこの男性・M氏は事件後名字までも変えていたのだ。
M秘書官を直撃した。
記者が法務省秘書官室を訪ねると不在。質問状を置いた上で、その足で議員会館の事務所に赴くと、M秘書官に会うことができた。
ところが、先に法務省から質問内容が知らされていたのか、M秘書官は焦った表情で「もういいですから」「けっこうです」と繰り返して記者を事務所から押し出し、取材を拒否。翌日、M秘書官は以下のような回答をファックスで寄せてきた。
〈平岡事務所に秘書として採用された時点では、平岡議員(当時は大臣就任前)に報告していなかった。なお、御誌からの取材を受け、今回、平岡大臣に報告している〉
〈裁判所において有罪判決を受けた件については、大変申し訳なく思っており、反省している。また、秘書として採用された際に、平岡議員(当時)に報告していなかった点も申し訳ないと思っている。なお、今後の身の振り方については、おって平岡大臣から指示があるものと思われるので、それまでは平岡大臣を支えていきたい〉
同様に、平岡法相に対し、補助金不正受給事件で摘発され、詐欺罪で有罪判決を受けた人物を秘書官に起用したことについて見解を問うと、
〈お尋ねの事件については、この度、御社からの取材を受け、本人から報告を受けたことがきっかけで把握したものであり、本人を大臣秘書官として採用した時点では承知していませんでした。
報告を受けたばかりですので、詳しい事実関係について調査・確認した上で、本人の今後の処遇について検討したいと思います〉
とした上で、
〈なお、本人は、お尋ねの事件に関して、執行猶予付きの有罪判決を受けていますが、その執行猶予期間は既に経過し、刑法上、刑の言渡しは効力を失っているものと承知しています〉
と回答した。
罪を犯した者が司法による裁きと社会的制裁を受け、反省し、そこから立ち直っていくことに、異論はまったくない。更生の機会は常に開かれていなければならない。
しかし、それが重要な国家機密にアクセスできる法務大臣秘書官となると、話は違ってくる。法の番人を補佐する秘書官であれば、一般人はもちろん、ほかの公設秘書よりはるかに高い倫理観や道義的責任が求められるはずである。M秘書官は、少なくとも、名字を変えて補助金詐欺で有罪判決を受けたことを隠すのではなく、きちんとした報告のプロセスを踏むべきではなかったか。
※SAPIO2011年10月26日号