野田内閣は「消費税を引き上げる時には国民に信を問う」(藤村修・官房長官)と、消費税増税法案を成立させた後に選挙に打って出る方針を固めている。そうなれば民主党が大敗し自民党のとの大連立が成立する可能性が高まる。
だが、増税選挙シナリオには大きな不確定要因がある。自民党と選挙協力を結ぶ公明党と、その支持母体で「800万票」を持つとされる創価学会の動向だ。
菅政権時代、民主、自民両党の執行部の間で大連立計画が盛り上がると公明党は反対の姿勢を見せ、そのたびに自民党は「800万票」の力を恐れて大連立の動きを後退させた。
公明党が大連立に反対する理由はわかりやすい。二大政党が手を結べば、公明党は政界での影響力を失い、学会員の要望を国政に反映させられない。拮抗する二大政党の間でキャスチングボートであり続けることが公明党の戦略なのだ。
それに加えて、公明党・創価学会は現在、重大な局面を迎えている。池田大作・創価学会名誉会長の体調問題である。
池田氏は昨年6月以降、一度も学会の本部幹部会に姿を見せていない。昨年11月、米国の大学の名誉博士号授賞式に出席したことを報じる聖教新聞には、ソファに深々と腰を下ろす池田氏の写真が掲載された。これまでは起立して証書を受け取る写真が使われていたため、学会員の間では「わずかの時間でも立つのがつらいのだろうか」という心配が囁かれている。
また、今夏から学会系出版社の月刊誌で池田氏の対談連載が始まったが、この対談自体は2004年に行なわれたものだった。あえて「健在」を示そうとするかのような演出が逆に憶測を呼んでもいる(創価学会広報室は「以前より、この種のご質問にはお答えしておりません」と回答した)。
そんな池田氏の「不在」は公明党の政治戦略に大きく影響する。
「今でこそ選挙の最前線で指揮を執ることはなくなったが、“池田先生の意向”は、選挙で学会パワーを発揮するうえで必要不可欠な言葉です」(公明党ベテラン地方議員)
かつて公明党副委員長を務めた二見伸明・元運輸相が語る。
「学会中央もいつまでも野党のままでは不安でしょう。民主党政権には問題が多いが、民主・自民両党が大連立に向かう前に与党に復帰したいという志向が強まっていると考えられる。民主党も公明党・学会を与党に取り込みたい。工作は始まっています」
※週刊ポスト2011年10月14日号