日本経団連の倫理検証見直しによって、2013年度入社組から就活が大きく様変わりする。「12月1日解禁」で、早期化による学業阻害を防ぐ配慮だが、これって本当にいいことなの? 作家・人材コンサルタントの常見陽平氏が鋭く指摘する。
* * *
2013年度の就職戦線といえば、日本経団連の倫理憲章見直しが物議を醸しています。特に大きなポイントは、「広報活動は12月1日開始。大学が行う学内セミナーへの参加も自粛」という点です。詳しくはこちらをご覧ください。(http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2011/001.html)
もちろん、日本経団連に加盟していない企業、加盟していても倫理憲章にサインしていない企業は関係ないといえばないように思えますが、これに伴いリクナビ、マイナビなどの就職ナビサイトも本オープンが12月1日以降になるので影響を受けます。
もちろん、これらの取り組みは就活の早期化・長期化などによる学業阻害などに配慮したものではあります。とはいえ、学生、大学、企業の間では「本当にこれで、就活はよくなるのか? むしろ、苦行になるのではないか?」との声が上がっています。そこで今回は、就職情報会社のスタッフを直撃し、話を聞いてみました。
話を聞いたのはキャンパス担当と呼ばれる、大学にお邪魔してキャリアセンターのお手伝いや、ナビサイトの会員獲得を行うスタッフの方。開口一番、彼女は言いました。
「今、とても忙しいんですよ・・・。大学での就職支援イベントがいっぱいで・・・」
企業による会社説明会を開くと、その企業も大学も叩かれるわけですが、12月1日まで企業と会えないと学生も就活を戦い抜けるか不安。苦肉の策で、就活対策、社会人との接点確保という意味で就職情報会社によるセミナーを開催するわけです。
「もっとも、大学によっては、“キャリア支援”という名目で企業の採用担当者を呼んで、面接対策講座などもやっているのですけどね」
なるほど。“キャリア支援”って絶妙な言い訳ですね。他にも、大学によっては企業に勤めるOB・OGとの交流会も開催されているようです。
「もっとも、いわゆるFラン大学と揶揄される大学では、まだ2012年度の就活が続行中です。もともと、これらの大学は就職に対する学生の動きも遅いのですよね。内定率も現段階で30%台。大変です」
ナビサイトオープンは12月1日になったものの、大手企業を中心に本選考は4月1日開始という企業が多くなる模様です。
「大手は短期決戦になりそうですね。ここ数年、学生が短期間でたくさん受けるために、志望動機が甘いということが問題になりましたが、今年はさらに顕著になりそうです」
企業の側では逆に、学生の志望動機は甘いものだと割りきって、考えを引き出す、まとめてあげるようなコミュニケーションが必要かもしれませんね。
「総合商社や製薬業界など採用時期を業界全体で後ろ倒しにする動きもありますが、これ、社員にとっては大変なのですよね。面接官である管理職の休暇のシフトを組むのが大変・・・。うまく乗りきれるのでしょうかね?」
就活の早期化・長期化に歯止めをかけ、学業阻害をしないという趣旨での今回の見直し。結局、学生をはじめ、嬉しい人って誰なんでしょうね? 混迷する13年度採用。今後も現場視点でレポートしますね。