野田政権の「増税路線」とは対照的に、不況下での「大減税」に踏み切った第40代アメリカ大統領のロナルド・レーガン。同氏主導のもと行われた一連の経済政策は「レーガノミックス」といわれ、アメリカ経済再生に大きく寄与した。彼がもし今、生きていたら、何を語るだろうか? 話題の新刊『世界を変えた巨人たち「IF」』(小学館)で、豊富な取材と史料をもとに10人の歴史上の偉人たちとの対話を綴っている国際ジャーナリストの落合信彦氏は、レーガンとこんな会話ができたのではないかと考える――。
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――レーガノミックスについて説明してください。
レーガン:一言で言えば大減税。例えば最も裕福な層の所得税はそれまで70パーセントだったが、これを50パーセントに落とした。低所得層の所得税は14から11パーセントに落とした。さらに1986年には裕福な層の所得税を、28パーセントまで減らした。
彼らは経営者、投資家、レストランや美術館の持ち主などだが一番金を使う層だ。減税すれば工場や会社に人を雇い入れる。投資に金をつぎ込む。ミドル・クラスも消費に走る。人、物、材料などの流通が盛んになれば、当然金の動きもよりスムースになる。しかも失業者が減る。経済は自然とダイナミックになる。
――あなたが大統領に就任したとき、アメリカは長いインフレによるリセッション(景気後退)に見舞われていましたよね。そんなときに大減税をするのは、危険ではなかったですか。
レーガン:何人かの専門家はそういうことを言った。しかし、私は専門家とかエキスパートの言うことをあまり信じない。彼らはごく狭い視野でしか物事を見ないからね。
――減税によって逆に連邦政府や州政府の税収入が増えました。しかし、それらの大部分は軍備拡張や新兵器の開発に回されましたね。
レーガン:少しくらい景気がよくなったからといって、政府がばらまき政策などやったらどうなると思う。当時、われわれは共産主義という敵と対峙していたのだ。ちょっとでも気を緩めたら、第二のミサイル危機が起きてもおかしくはなかった。常に最悪のための準備をしておく。そうすれば何が起きてもあわてる必要はない。
古代ローマの賢人が、平和を欲するなら戦争の準備をしておけと言ったが、それは今日でも十分に通用する言葉だ。その準備とは軍備だけではない。社会基盤がしっかりして、国民が幸せに暮らし、民主主義国家として盤石な体制を保つことなのだ。そうすれば敵は戦争を起こすことを躊躇する。
※落合信彦『世界を変えた巨人たち「IF」』(小学館)より