厚生労働省の「介護給付費実態調査月報(2011年7月審査分)によると、介護サービスの受給者総数は336万7300人、サービス費用額は6191億5500円で、前年同月に比べて、それぞれ15万8000人、287億6500円増加している。
医療ジャーナリストの熊田梨恵さんは、在宅医療の現場を取材していると、認知症の患者さんが多いと実感すると話す。
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取材していると、認知症患者の増加に現場の医療・介護サービスが追いついていないと感じるんです。最近のニュースでも、認知症の母の介護に疲れた息子が、母を殺してしまったという話がありましたよね。夫が妻を殺してしまったというケースも…。これは氷山の一角で、実際に介護に疲れ切ってうつ病になったり、自殺を図ったり、家庭崩壊のケースもよく聞くんですよ。
数は多いのに、認知症についての偏見も変わらずありますから、これからこういう話がもっと増えていくのではないかと…。
確かに介護保険ができてよかったところもあるんですけど、認知症患者へのサービスが少ないんです。利用者を日中預かるデイサービス、数日間宿泊できるショートステイなどは「周囲に迷惑になる」といって利用を断られたりするんです。認知症は人によって症状がさまざまで、無気力になって抑うつ状態、無反応になるような人もいれば、常に落ち着きがなかったり、急に攻撃的になったりする人もいるので、施設では対応できないといわれるそうです。
一人一人の状態に合わせた丁寧なかかわりを行っていくと改善される部分が大きいそうですが、施設など利用者の多いところでは難しくなりますよね。国も認知症患者に対応できるサービスの整備を進めていますけど、まだまだ足りていないみたいです。
取材をしていると、医師の間でも、認知症についての知識をしっかりと持って診られる専門医が少ないことが問題になっているとわかってきたんですよ。あまり認知症について詳しくない医師が漫然と認知症の薬を処方して、その副作用で逆に症状がひどくなっていたというケースも学会で報告されていました。
認知症に関する医療や医学はまだ発展途上なので、医師の中でも判断にばらつきがあったり、意見がまとまらなかったりするところがあると聞きます。
※女性セブン2011年10月20日号