10月、暴力団組員への利益供与などを禁じた暴力団排除条例が全国漏らすことなく実施された。暴力団問題は新たなステージを迎えるわけだが、この先何がどう変わっていくのか、そして、暴力団との交際により芸能界を引退した島田紳助にはどんな人生が待っているのか。ノンフィクション作家の溝口敦氏がレポートする。
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暴排条例はこの10月、いよいよ全国洩らすことなく実施に移されたため、一部に紳助の芸能界引退は暴排条例のためという見方も広がった。だが、条例が定める暴力団との密接交際の禁止は、具体的にどのような交際を禁じるのか、線引きが極めて難しい。
愛知の条例には、暴力団にみかじめ料を支払った者はその名を公表するといった条項がある。それなりに分かりやすいが、たとえば仕出し弁当の注文を受けた業者が暴力団事務所に弁当を届けて料金を受け取った場合はどうか。旅館やホテルが多数組員の宿泊を受け入れた場合はどうか。一律に線引きすることはほとんど不可能といってよかろう。
だが、とはいえ、紳助事件により暴力団との交際は損だし、大ごとになるという認識が国民の間に広がり、定着しつつある。紳助は交際を理由に事実上、芸能界を追放されたも同然だし、今後も山口組系極心連合会と交際を続けるかぎり、損を続けることも自明である。
というのは、暴力団は現在シノギのネタがなく、とりわけ末端では一般社会以上に金詰まりだからだ。紳助には押しも押されもしない事業家という誇りがあるだろうが、案に相違してピラニアが群棲する川に裸で入ったに等しい。芸能人にはある程度パブリックな要素があるが、芸能人を辞めた以上、暴力団が紳助に遠慮する理由はない。45億円もの資産を持った金持ちとして骨までしゃぶられるにちがいない。
※SAPIO2011年10月26日号