9月から始まった厚生労働相の諮問機関「短時間労働者への社会保険適用等に関する特別部会」。厚生年金や、企業の健康保険組合などの社会保険にはいる必要がなかった短時間のパート労働者を、社会保険に加入させる方向で議論が動いている。
現在、パート労働者が社会保険に加入するかどうかの線引きは、「週30時間」の労働をしているか否か。これは正社員の概ね、4分の3以上働いているかどうかが分岐点。サラリーマンを夫に持つ主婦は、労働時間が「週30時間」未満であれば、自ら年金などの社会保険料を払わなくてもよく、夫が肩代わりしてくれる形になっている。しかし、今回検討されている制度改革では、この「週30時間」未満が「週20時間」未満に引き下げられるという。すると、どうなるか。まずは単純に手取り収入が1割以上減ってしまう。
制度改正の影響は、単純に手取りが減るばかりではない。「年金博士」として活躍する社会保険労務士の北村庄吾さんが解説する。
「社会保険料は会社も半額支払う仕組みなので、パート労働者だけでなく、会社にも新たな負担が生じます。社会保険料率14%ぶんを会社が負担するということは、たとえば月10万円の給料をパート労働者に支払っていた場合、同時に14%の1万4000円を保険料として負担しなければならないわけで、会社にとってもかなり苦しい。そのぶん、パート労働者にシワ寄せがいく可能性があります」
今回の制度改革が行われたとき、会社側がとる対応として考えられるのは、主に3つ。まずは、「働く時間を減らしてくれ」というケース。
「会社側が考えているのは、ワークシェアリング。これまで30時間近く働いていた人が2人いたら、20時間近くで3人のパートを雇うようになる」(特定社会保険労務士の稲毛由佳さん)
つまり、いま週30時間近く働いている人は、会社から「働く時間を減らしてほしい」と求められることになるのだ。
そして、2つ目に考えられるのは、「時給を下げさせてくれ」というケース。
「会社側が、パート労働者の社会保険料の負担に耐えかねて、“時給を下げさせてくれ”と頼み込むケースも増えてくるでしょう」(前出・稲毛さん)
賃下げの要求は、契約更新の時期が多い。契約に同意しなかった場合には、雇い止め(会社が契約の更新を拒否すること)になることもあるので、パートの立場ではなかなか対抗しづらい。
そして、3つ目。一部の悪質な会社では、会社が負担するべき保険料をすべてパート労働者に押しつけてしまうケースも考えられる。
「給与明細は毎月、必ず保管しておくべき。社会保険料がかかるようになったら、社会保険料が基本給の13~14%を超えていないかチェックすること。超えていた場合、労働基準監督署に相談のうえ、会社に返還請求をすることができます」(前出・北村さん)
※女性セブン2011年10月20日号