非婚化、少子化が浸透した現代の日本では、人生の晩年に孫を愛でることはある意味貴重な体験となりつつある。しかし、時間や愛情、お金をどう注いでいくべきか、頭を悩ませている人も少なくない。いま、孫とどう向き合うべきか。4回目の手術の40日後、孫が生まれたジャーナリストの鳥越俊太郎氏(71)は、「孫のことを考えるなら、日本がどうなるか考えなければ」という。
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孫の将来を思うと、本当に大変だろうと思いますね。孫が大人になる頃、日本がどうなっているか。残念ながら非常に暗い展望しか見えてこないからです。日本の社会全体が来るところまで来てしまって、後はしばらく落ちるしかない。現実に少子高齢化がどんどん進み、今すでに900兆円を超える借金がある。10年後、20年後はものすごく辛い状況になっているはずです。そのどん底から這い上がれるかどうかの時代を、彼らは生きなければいけない。
基本的に人口構成は非常に大きな要素です。あと10年で団塊の世代が70歳を超え、彼等を支えられるだけの人間がいない。介護をするお金もない。すでに老老介護は始まっているけど、10年後、20年後のことを考えると恐ろしくなります。
このままでは、将来、孫世代に「おじいちゃんたちが借金を残したからこんなになっちゃった」といって恨まれるよね。
だから、孫のことを本当に考えるのなら、たんに自分の孫をかわいがったり自分の孫の将来を考えるだけではダメで、日本の国がこれからどうなるかをちゃんと考えなければいけない。日本の社会や政治のあり方を、ゼロベースから全部考え直していかないと、本当に孫たちは大変な時代を生きることになるんです。
例えば、今回の原発事故をチャンスに変えて、太陽光エネルギーや水素エネルギーに思い切って切り換えていくとか、強引でもいいから官僚主導の政治をひっくり返すとか。
残念ながら、10年後、20年後の日本国のあり方について明確にビジョンを示している政治家は見当たらない。だから意識的に、僕たちおじいちゃん世代が考えて提言して、政治をちょっとでも変えていくしかない。まだ力をもっている世代だから、大いに発言して、政治にももっと関心をもつべきだと思う。
そのために、僕もジャーナリストとして、残りの人生を賭けてやっていくつもりです。それが孫の将来のためにもなると信じてね。
※週刊ポスト2011年10月21日号