川端康成の小説『雪国』で一躍有名になった新潟県湯沢町が揺れている。リニューアルのため昨季休業した、加山雄三(74)が経営する『加山キャプテンコーストスキー場』が、今年5月にそのまま廃業することが決定。
特別観光大使を務める加山は湯沢町の看板だっただけにその衝撃は大きく、その後処理を巡っては、いまだに地権者からは不満の声が上がっている。そこで渦中の加山に、直撃すると拍子抜けするほどに元気いっぱいだった。以下がそのやりとりだ。
* * *
――昨年のリニューアル話から一転して廃業。解決されていない問題も多く、地元は困惑している。
「それは皆さん心配しますよね。でもまぁ、僕は20年間、トータルで20億円以上ものお金を補填してやってきたからね。バカだといわれてもしょうがないと思うけれども、ずっと赤字で、1回も黒字なし。売却も考えたけど、東日本大震災で買い手が付かなくなって、廃業するしかないなと」
――「目の黒いうちはやめない」といっていたはずだ。
「だからこうして20年間続いたんじゃないの(笑い)。その間、僕が歌で稼いだり、絵を売ったりしたお金をつぎ込んできたんだから。僕としては精一杯やったと思ってますよ」
――地権者には測量と原状回復を早くしてもらいたいという不満もあるようだ。
「測量には着手しています。杭打ちは雪が降る前には終えて、境界の問題は解決できる。原状回復の方は、田んぼや畑に戻せっていわれても、不可能なんだよ。だから今後、どうしたらあの場所をちゃんと採算性のあるものに変えられるかを、皆さんと相談しながら考えていかないと。
僕は5歳の時から、毎年湯沢の町に行っている。観光大使もやってるし、第二の故郷と思ってるくらいだから、このまま放ったらかしにするような気持ちは全くないよ」
――本人が交渉の場に出てこないという声もあるが。
「僕自身も湯沢に行って、ご説明したりご意見を聞いたりしたが、コンサートツアーがあったり、絵画展をやったりで忙しいからね。それこそ僕が稼がないと借金が返せないよ(笑い)」
――事業家としては、かつてホテルを倒産させ、今回はスキー場を廃業した。
「今回みたいなことも、全部勉強になるというかね。人生で無駄なことは一つもない。後悔はしてないよ、俺は。どんな状況に置かれても、何か目的をもって、歯を食いしばって一生懸命やって生きる。だから俺、若いんじゃないかと思うんだ。よくいわれるもん、人に(笑い)。もう74だぜ」
――落ち込むことは?
「あんまりねえなぁ。悩んでると、どんどん歳を取っちゃうんじゃねえかと思うしさ。ハッハッハ!」
※週刊ポスト2011年10月21日号