暴力団関係者の間で、改姓改名が増えている。特に、「企業舎弟」「共生者」と呼ばれるビジネスを手がける暴力団周辺者の間では、改名は当たり前、場合によっては養子縁組することで姓も変える。その理由を、ジャーナリストの伊藤博敏氏が解説する。
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理由は、警察など捜査当局、国税・証券取引等監視委員会など調査当局の捕捉を避けるためである。それも、姓は「鈴木」「田中」、名は「一郎」「正」のような数の多い平凡なものを選ぶ。ネット検索の“網”にかからないようにするのだ。
暴力団が、追い詰められている証拠である。
暴力団の全ての活動を条例で封じる「暴力団排除条例(暴排条例)」が、10月1日、東京都と沖縄県で施行された。都道府県の掉尾を飾るもので、この日を機に、暴力団員と「密接交際者」と認定された周辺者は、名前を公表され、役所の“庇護”を得られず、銀行口座は封鎖、一般市民としての生活を営むことができなくなった。
この認定を避けるために、あらゆる手法が用いられている。冒頭の改姓改名、居住地移転は初歩だ。個人だけでなく法人も社名を変え、登記地を変え、資本構成を変えて、暴力団色を一掃する。
つまり、進行しているのはマフィア化である。
紳助引退騒動は警察庁が暴力団排除を推し進めた結果の一つであり、暴力団はさらに地下に潜っていくことになるだろう。10年後には、現在約8万人の暴力団員と準構成員は急減、1万人以下になると予想されている。
数字の上ではヤクザは減っていく。しかし、それが「望ましい社会」とは言えないのかもしれない。現実に始まっているマフィア化を見ても、その危惧は強くなる。
※SAPIO2011年10月26日号