国際情報

閉塞感を打破するにはレーガン5つの政策に学べと落合信彦氏

 現在の日本の閉塞感は1970年代のアメリカに似ていると指摘するジャーナリストの落合信彦氏は、かつてその閉塞感を打破したロナルド・レーガンから多くのことを学ぶべきだという。『世界を変えた巨人たち「IF」』を上梓した落合氏がレーガンの5つの政策を解説する。

 * * *
着目すべき点の一つは、レーガンが「エキスパートの意見」を信用しなかったことだ。財務官僚の書いたペーパーをそのまま読み上げる日本の首相とは正反対と言っていい。レーガンが掲げた政策は大きく5本の柱によって支えられていた。

 1つ目は政府の徹底的な歳出削減。保守の信条である「小さな政府」路線の志向。

 その上で断行された2つ目の柱が、史上類を見ないほどの「不況下の大減税」である。レーガノミクスはここから始まる。この点こそ、今の日本が最も学ばなくてはならないポイントだろう。

 アメリカの連邦所得税では当時、最も裕福な層に70%もの課税をしていた。政府が税金を取り立てれば取り立てるほど、人々は働く意欲を失い、経済活動は沈静化してしまうレーガンはそう信じていた。そして彼の在任中に連邦所得税の最高課税率は28%にまで引き下げられた。

 収入の7割を政府に召し上げられていた人たちが、逆に収入の7割以上を自由に使えるようになったのだから、それは劇的な変化だった。成長はスピードを増し、政府の税収は大幅に増え、失業は急激に減り、雇用創出は400万、一般家庭の収入はパー・キャピタあたり4000ドルも増えた。
 
 これらの実績はポスト・レーガンのブッシュ、クリントンの増税政策による実績を遙かに凌いでいた。例えば実質経済成長率ひとつを取ってもそれは明白。レーガン時代は平均して3.2%。これに比べてブッシュ、クリントン時代は2.1%だった。

 税率を下げても経済が活性化すれば、政府の税収は逆に増える。レーガンのこの考えは、経済学者たちから猛烈に批判されたが、彼は全くブレなかった。彼の回想録などを読み返すと、14世紀の哲学者が古代エジプトの租税について書き記した文書に「税率が低い時代のほうが税収は多かった」と記録されていることなどに言及している。レーガンが、歴史からより多くを学ぼうとする真摯な姿勢を持つリーダーだったことがよくわかる。

 3つ目の柱は様々な規制の廃止であった。新しいビジネスを生み出そうとする者たちの足を、政府が引っ張ってはならないという考えだ。

 そして4つ目が過度のインフレを抑制するための金融引き締めだった。今の日本政府と日銀はインフレを恐れるあまり、デフレを脱却できないでいる。しかし、レーガン政権下でのインフレ克服を学んでいれば、果敢な金融緩和に挑むことができるのではないだろうか。そう思えてならない。

 5つ目の柱は彼が若い時から信じていた対ソ連政策の実施である。はっきり言えば、ソ連という奴隷大国を崩壊させること。

 このように大胆な改革を推し進めたレーガンが「もし」今の日本にいたら、政府が推し進める政策はまったく違ったものになっているだろう。

 民主党政権はバラ撒き政策を掲げて大きな政府に傾き、「仕分け」などという目眩ましばかりで抜本的な財政削減に取り組まず、挙げ句は増税を押し付ける。しかも少し批判されただけで、言うことがコロコロと変わる。信念を貫き、国を救ったレーガンとはまさに正反対なのである。

※SAPIO2011年10月26日号

関連キーワード

トピックス

モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁/時事通信)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
運転席に座る広末涼子容疑者
《事故後初の肉声》広末涼子、「ご心配をおかけしました」騒動を音声配信で謝罪 主婦業に励む近況伝える
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン
レッドカーペットを彩った真美子さんのピアス(時事通信)
《価格は6万9300円》真美子さんがレッドカーペットで披露した“個性的なピアス”はLAデザイナーのハンドメイド品! セレクトショップ店員が驚きの声「どこで見つけてくれたのか…」【大谷翔平と手繋ぎ登壇】
NEWSポストセブン
鶴保庸介氏の失言は和歌山選挙区の自民党候補・二階伸康氏にも逆風か
「二階一族を全滅させる戦い」との声も…鶴保庸介氏「運がいいことに能登で地震」発言も攻撃材料になる和歌山選挙区「一族郎党、根こそぎ潰す」戦国時代のような様相に
NEWSポストセブン
竹内朋香さん(左)と山下市郎容疑者(左写真は飲食店紹介サイトより。現在は削除済み)
《浜松ガールズバー殺人》被害者・竹内朋香さん(27)の夫の慟哭「妻はとばっちりを受けただけ」「常連の客に自分の家族が殺されるなんて思うかよ」
週刊ポスト
真美子さん着用のピアスを製作したジュエリー工房の経営者が語った「驚きと喜び」
《真美子さん着用で話題》“個性的なピアス”を手がけたLAデザイナーの共同経営者が語った“驚きと興奮”「子どもの頃からドジャースファンで…」【大谷翔平と手繋ぎでレッドカーペット】
NEWSポストセブン
サークル活動に精を出す悠仁さま(2025年4月、茨城県つくば市。撮影/JMPA)
《普通の大学生として過ごす等身大の姿》悠仁さまが筑波大キャンパス生活で選んだ“人気ブランドのシューズ”ロゴ入りでも気にせず着用
週刊ポスト