創立11年目の私立大学・日本橋学館大学では、入学初年度の授業で「アルファベットの書き方・読み方」「円の面積」などを学ぶ。日本橋学館大学が「基礎教育」を重視する狙いは、学生の質の向上と就職率アップがある。同大学の就職率は77.5%。文科省調査による今春4年制大卒の66.1%を大きく上回る。同大HPで紹介される卒業生就職先には、県庁職員や地銀なども並ぶ。
「最近は就職希望欄に『フリーター』と書く学生も多いと聞きますが、社会に出る常識を身につけさせるためにも、基礎教育を最重視しています。この点は、受験生や保護者に対する本学のアピールポイントでもあります」(広報室)
質の低下した学生に基礎を叩き込み、社会人として最低限認められる力をつけさせることに注力しているというわけだ。同大学の教授で、講義内容を決定する教務委員会の委員長を務める塩澤寛樹氏はこう語る。
「授業内容が“中学生レベル”との批判があることは我々も承知しています。しかし、中学英語を完全にマスターすれば、一般的な英会話はできる。それができる人たちが(有名大学の卒業生に)どれほどいるのかは疑問ですよ。本学の学力レベルが高くないのは事実ですが、この授業内容は今の学生に何が必要なのかを真剣に考えた結果なのです」
希望すれば誰もが入学できる全入時代を迎え、もはや大学は「最高学府」ではなくなっている。身の丈に合わない教育で学生に無駄な時間を過ごさせるより、社会の役に立つ若者に育てるという考え方は、決してバカにできない。
※週刊ポスト2011年10月21日号