夫婦の日常も様々だが、あらゆる夫婦のエピソードが、漫談家の綾小路きみまろにメールや手紙で続々と寄せられている。今回の報告は、食品メーカー勤務のご主人(54歳)。これまで楽器には全く興味のなかった奥様(53歳)ですが……。
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突然、「私、大正琴をやるわ!」といい出した女房。テレビで演奏を聴き、その雅な音色に魅了されたようです。「大丈夫よ、私のへそくりで買うから」と、通販で琴と教材を購入。教材には『千の風になって』とか、好きな曲も載っていたので僕も楽しみでした。
翌日、「練習して少しは上達しているかな」と期待しつつ帰宅すると、「ねェ、アナタ、この髪形似合う?」と女房。ん? 髪をアップにしてどうしたんだ?
「パンフレットの女性の写真を見たら、和服姿で髪がアップなの。やっぱり、形から入るべきでしょう? 美容院に行ってきたのよ」そして、「明日はデパートへ行って着物を見てくるわ。私のへそくりで足りない時は協力してね」だって。仕方ない、『千の風になって』を聴くためです。
その翌々日、「さァ、形は揃ったから、今日から始めるわ」と張り切っていた女房。でも帰宅すると、ソファーに寝転がっていて、「アナタ、足が痛いから揉んで!」と涙目です。練習のため正座したのはいいけど、すぐに痺れて、そのうち痛くて耐えられなくなったんだとか。
「太りすぎなんだよ。体重が足にかかって正座できないんだろ。あぐらをかいて練習しろ」「イヤよ。私は形から入るの。あぐらをかくのはアナタの鼻で十分」
ああいえばこういう女房。形から入るなら、まず自分の体の形、体形を何とかしろっつーの!
※週刊ポスト2011年10月21日号