つけてもらってその値段の高さにビックリ――そんなこともあるのが「戒名」だが、果たしてこれはどういったものなのか。まずは「戒名の仕組み」を紹介しよう。
宗派によって多少の違いはあるものの、戒名は「院号」「道号」「戒名(法諱)」「位号」という4つのパーツから構成されている。
最も大切なのは「戒名(法諱)」だ。本来、戒名とはこの漢字2文字のことを指す。
一般的には俗名(生前の名前)から1字をとり、清字から1字をとる。清字とは、人間の目に見えない観念的な文字のことを指す。たとえば、愛・誠・美・真・宗・恵・理・寿・悠・優・賢・智などが挙げられる。
次に決めるべきは「道号」だ。道号も漢字2文字で構成される。
「道号には“この世のこと”を入れるのが基本的な考え方です。本人の趣味、仕事の業績などから字を考えたり、好きな故事成語から引用したり、最も個性を出せる部分といえる。道号には実字を1字いれると戒名(法諱)とのバランスがよくなります」(前出・松原住職)
実字とは、清字に対して人間の目に見える実体のあるものを表わす字のこと。天・空・日・月・雲・水などが代表的だ。
ここに、男性なら信士・居士(女性なら信女・大姉)といった位号を付ければ、基本的な戒名は完成する。
戒名の指針として古くから伝わるのが「三選三除の法則」である。大正大学の藤井正雄・名誉教授(宗教学)がいう。
「三選とは戒名に使ってもいい字の基準を示しています。“仏教の精神に合った字であるか”“口にしたときに響きのいい字であるか”“年齢にふさわしい字であるか”の3つを考慮すべきということ。逆に三除とは使ってはいけない漢字のこと。“難しくあまり使われない字”“意味のない字”“発音の語感が悪い字”は避けるべきという意味です。また戒名は悟りを開くための名前ですので、食べ物を表わす字は使えない。動物の名前も使ってはいけない。ただし、龍など霊獣はいいとされています」
その他、手・指・首など人間の体の部位を表わす字も避けるべきとされる。
僧侶に頼めば高額な戒名料をとられる「院号」だが、これも「各人が自由に付けてかまわない」(前出・松原住職)という。自らのポリシーや生き甲斐などから漢字2文字を選び、院の前に置く。
※週刊ポスト2011年10月21日号