新宿東口にある激戦100メートルの〈スカウト通り〉で女に声かけする男たち。彼らは一体どれほど稼ぎ、どのようにして声をかけるのか。作家・山藤章一郎氏がレポート。
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新宿駅東口。
駅の階段を上がると、果物屋「百果園」がある。その前から、歌舞伎町一番街につながる靖国通りまでのきっちり100メートル、140歩が、〈おっパブ〉で乳を揉ませるねえちゃんたちのいう〈スカウト通り〉である。
幅は11メートル、16歩。ここに5時から8時のピーク時、40~50人ほどのスカウトたちが女に声かけする。3時から終電まで〈ネタ〉獲りに立ちつくす者もいる。
ここでは女を〈ネタ〉と呼ぶ。
「スカウトなんすけど、水商売、風俗、AV、興味ないっすか。稼げますよ」と声をかける。〈ネタ〉の合意を取り、店に嵌め込めば、翌月10日、〈ネタ〉の稼ぎの10~15%の〈スカウトバック〉が、店から振り込まれる。
Aランクの〈ネタ〉なら、入店ボーナス5万円に永久歩合がつく。月に100万稼ぐ〈ネタ〉なら、10%の10万が月々入る。
100メートル区間にひしめくスカウトマンは基本はみな、40社ある〈スカウト会社〉に属している。完全歩合制の彼らは仲間内で自分らを〈プレイヤー〉と呼ぶ。
先輩は〈プレイヤー〉にここでの〈法〉を教える。女に話しかけられない奴は死ね。〈ネタ〉を見つける、声かけする、その時間は0.3秒内。女の前に立て。塞いで立ち止まらせろ。
ナンパではない、正しいビジネスだ。スケベ心は出すな。名刺を受け取らせ、ケータイ番号を聞いて〈アポった〉女には1日の終わりに必ず連絡せよ。
※週刊ポスト2011年10月21日号