国内

サイバー社会 洋式便器と水洗式普及と同様の大変革と大前研一

 東日本大震災や未曾有の円高、さらには来たる増税など、様々な変化の直面に立たされている我々日本国民。こんな時代にこそ強力なリーダーシップが求められる。最新刊『「リーダーの条件」が変わった』で、新たなビジョナリー・リーダー像を提示した大前研一氏が、これからの指導者が踏まえるべき新世界ビジョンを披瀝する。

 * * *
 いま我々は、新たな歴史認識、世界史観を持たねばならない時期にきている。これまで世界では北の国が栄えて先進国となり、南の国の大半は発展が遅れて途上国と呼ばれてきた。そして東西冷戦の終焉後、南北間の葛藤が一気に表面化した。先進国と途上国の極めて大きな貧富の差いわゆる「南北問題」である。
 
 だが、今や両者の関係は逆転し始めている。周知の通り、この10年ぐらいの間に北の先進国がことごとく低迷するようになり、南の途上国の中から経済成長する新興国が続々と登場しているのだ。

 もしかすると、これはある意味で「西欧の終わりの始まり」かもしれない。ただし、フランシス・フクヤマが言うような文明の問題ではなく、産業革命以降、北の国が独占してきた技術が南の国に移ってきて、南の国でも北の国と同じようなことができるようになった、ということである。

 人類社会は、成熟国が2世代続けて繁栄を維持する方法を見つけていないのではないか、と思う。なぜなら、成熟国では世代が替わると、様々なことが大きく変化しているからだ。

 たとえば、尾籠(びろう)な話で恐縮だが、1960年代までの日本の一般家庭のトイレは、ほとんどが汚物を和式便器の下に溜める汲み取り式だった。しかし1970年代に入ると、洋式便器と水洗式が普及し始めて我が家もそうなった。

 このため70年代生まれの私の息子たちは、小学校の遠足に行った時、田舎の和式便器にしゃがんで用を足すことができず、排便を我慢したまま自宅に帰ってきた。つまり、トイレのような毎日の生活に欠かせない基本的な行為でさえ、1世代でガラリと変わってしまう。世代の交代というのは、それほど影響が大きいのだ。

 それと同様に世界の勢力図も20世紀後半第2次世界大戦が終わってからの50年でガラリと変わり、とくにここ10年ほどは南北の隔たりがなくなるという革命的な変化が起きている。

 その理由の1つは、インターネットとPC(パソコン)、携帯電話などの普及によるサイバー社会の出現である。それによって「能力の習得」が極めて簡単になっている。

 南の途上国に生まれ育っても、子供の頃からネットに触れていれば、北の先進国と同等の教育を受けることができるし、世界中の情報も直接入手できる。努力次第で北の国の人々と同じような能力・スキルを身につけることができるようになった。

 その同じような能力を身につけた南の国の人々が、コストは北の国の10分の1程度で雇えるから、企業が大量に南の国(中国も含む)へと移っていったのである。

※SAPIO2011年10月26日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

遠藤敬・維新国対委員長に公金還流疑惑(時事通信フォト)
《スクープ》“連立のキーマン”維新国対委員長の遠藤敬・首相補佐官が「秘書給与ピンハネ」で税金800万円還流疑惑、元秘書が証言
NEWSポストセブン
2018年、女優・木南晴夏と結婚した玉木宏
《ムキムキの腕で支える子育て》第2子誕生の玉木宏、妻・木南晴夏との休日で見せていた「全力パパ」の顔 ママチャリは自らチョイス
NEWSポストセブン
雅子さま(2025年10月28日、撮影/JMPA
《雅子さま、62年の旅日記》「生まれて初めての夏」「海外留学」「スキー場で愛子さまと」「海外公務」「慰霊の旅」…“旅”をキーワードに雅子さまがご覧になった景色をたどる 
女性セブン
悠仁さま(撮影/JMPA)
《悠仁さまの周辺に緊張感》筑波大学の研究施設で「砲弾らしきもの」を発見 不審物が見つかった場所は所属サークルの活動エリアの目と鼻の先、問われる大学の警備体制 
女性セブン
清水運転員(21)
「女性特有のギクシャクがない」「肌が綺麗になった」“男社会”に飛び込んだ21歳女性ドライバーが語る大型トラックが「最高の職場」な理由
NEWSポストセブン
活動再開を発表した小島瑠璃子(時事通信フォト)
《輝く金髪姿で再始動》こじるりが亡き夫のサウナ会社を破産処理へ…“新ビジネス”に向ける意気込み「子供の人生だけは輝かしいものになってほしい」
NEWSポストセブン
高校時代の安福久美子容疑者(右・共同通信)
《「子育ての苦労を分からせたかった」と供述》「夫婦2人でいるところを見たことがない」隣人男性が証言した安福容疑者の“孤育て”「不思議な家族だった」
中国でも人気があるキムタク親子
《木村拓哉とKokiの中国版SNSがピタリと停止》緊迫の日中関係のなか2人が“無風”でいられる理由…背景に「2025年ならではの事情」
NEWSポストセブン
ケンダルはこのまま車に乗っているようだ(ケンダル・ジェンナーのInstagramより)
《“ぴったり具合”で校則違反が決まる》オーストラリアの高校が“行き過ぎたアスレジャー”禁止で波紋「嫌なら転校すべき」「こんな服を学校に着ていくなんて」支持する声も 
NEWSポストセブン
24才のお誕生日を迎えられた愛子さま(2025年11月7日、写真/宮内庁提供)
《12月1日に24才のお誕生日》愛子さま、新たな家族「美海(みみ)」のお写真公開 今年8月に保護猫を迎えられて、これで飼い猫は「セブン」との2匹に 
女性セブン
東京ディズニーシーにある「ホテルミラコスタ」で刃物を持って侵入した姜春雨容疑者(34)(HP/容疑者のSNSより)
《夢の国の”刃物男”の素顔》「日本語が苦手」「寡黙で大人しい人」ホテルミラコスタで中華包丁を取り出した姜春雨容疑者の目撃証言
NEWSポストセブン
石橋貴明の近影がXに投稿されていた(写真/AFLO)
《黒髪からグレイヘアに激変》がん闘病中のほっそり石橋貴明の近影公開、後輩プロ野球選手らと食事会で「近影解禁」の背景
NEWSポストセブン