孫が自分にどれだけ似ているか、祖父母にとっては気になるものだ。子どもは自分に似ずに鼻が低いが、孫には鼻が高くなってほしい……なんて期待もあるだろう。このように親の持っている特性が子どもには表れず、孫にその特性が出ることを隔世遺伝という。しかし遺伝学者の中込弥男氏は、
「人間には全部で2万4000の遺伝子があり、たまたま持っている要素が表に出ただけのことですから」
と話す。子どもは親から遺伝子を受け継ぎ、その遺伝子を孫が受け継ぐ。中込氏によれば、関係している遺伝子の数が多ければ多いほど特性は遺伝しやすいという。
「例えばがんは2076、肥満は389、アルツハイマーは275の遺伝子が関係していて、かなり遺伝との関係があるとみられます」
ちなみに中込氏によれば、「浮気性」も遺伝する可能性があるという。
「ネズミの実験では、交尾した後にすぐに別の雌を追いかける雄と、一夫一婦型の雄がいることがわかっています。ヒトで調査したデータはないが、ネズミが持っている遺伝子を人間が持っている可能性は当然ありえます」
もちろん、自分のいいところは似てほしいし、「孫は自分により似ている」と他の祖父母と内心競い合う気持ちもわかるが、
「祖父と孫では、25%のレベルで遺伝子は共通。目立つところが似ていることもあれば、内臓や喉の奥の形など、外見ではわからないところが似る場合もある。だから、“孫は自分に似ていない”とがっかりすることはありません。内臓レベルまで調べれば、どこかしら似ているんですから」(中込氏)
もし目や鼻の形が似ていなくても、「胃が丈夫なのはオレに似た」などと思えばいい。ただし、「浮気性」が遺伝して嬉しいかどうかは考えものである。
※週刊ポスト2011年10月21日号