安倍昌彦氏は宮城県生まれ。早大野球部で2年までプレー。卒業後、会社員を経て雑誌『野球小僧』でライター業を始める。全国のアマチュア選手を訪ねる企画「流しのブルペンキャッチャーの旅」では150人以上の剛球を体感した安倍氏が、現在セ・リーグの盗塁数トップの藤村大介二塁手についてのエピソードを語る。
* * *
巨人と阪神の3位争いは混沌として予断を許さないが、CSでぜひそのプレーを見たいとしたら巨人・藤村大介二塁手のスピードあふれる懸命なプレーだ。50m5秒8の俊足と抜群のスタート感覚を持ち、10月6日現在、27盗塁はセ・リーグトップ。送りバントができて進塁打が打てるから、格好のつなぎ役として2番打者の座を獲得した。
2007年の高校生ドラフト1位。正直、そりゃあ荷が重いだろうと思った。初めての春季キャンプ。ナインの前で挨拶をした藤村の姿を見て、「今年のドラ1、中学生かいな…」。そんな声まで漏れたという。
小さいというより、体が薄く、細かった。くさらずに頑張って、なりふり構わぬ体当たりのプレーで台頭。すっかりたくましくなった体から、なめてかかると外野を抜いて、アッと言う間に三塁を陥れる。“忍者”のようなクセ物である。
※週刊ポスト2011年10月21日号