もはや制御不能となった物価上昇の中国で、倹約に走る新しいタイプの若者たちが生まれ、流行語となっている。ケンタッキーフライドチキンが仕掛けたお得なハンバーガーが語源となったこの若者たち、どんな生態なのか。ジャーナリストの富坂聰氏が解説する。
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第二のゴールデンウィークと呼ばれる国慶節の七連休を終えたばかりの中国では、毎度連休直後に話題となる消費動向がメディアを賑わせている。
ただ、今回この稿で取り上げるのは凄まじい中国人の消費ではなく、ひたすら倹約に走り始めた中国の若者の動向についてだ。
今年の初めごろ、中国の都市部で確認されたある消費傾向が話題となり、ここから一つの流行語が生まれた。それは「夜購族」という言葉で、意味は閉店に近づいたスーパーでのみ買い物をする人々のことだ。
とくに生鮮食品など、閉店に近づいた時間帯に押し掛けて値下がりした商品だけを買って帰る人々が急増した社会現象を受けたものだ。
背景にはもはや制御不能となった物価上昇の問題がある。この流れのなか、この秋、新たに生まれた流行語が「蝦米族」だ。発音は「シャーミーツゥー」で、ケンタッキーフライドチキンが仕掛けたお得なハンバーガーが語源となっている。
この「シャーミー」は安い値段で中国人が大好きなエビが七つも入っていると話題となったもので、安いのにお得という商品の代名詞になっているのだ。
そして「蝦米族」は、比較的ブランドに慣れた人々が、いまの厳しい現状で思ったような買い物ができなくなったことで、サンプル品のバーゲンや売れ残り、中古品や物々交換など、ネットを通じて情報を集めることで、格安で目当てのブランドを手に入れる人々が出てきたことを表現しているのだ。
この秋、超高級品は相変わらずよく売れたようだが、早くも少しぜいたくを味わった中間層から脱落し始めた人々が出てきたということだろうか。