誰がどう見ても、それは異様だった。小沢一郎・民主党元代表が陸山会事件裁判の初公判後に行なった記者会見は、やや大袈裟にいえば小沢氏と新聞・テレビの記者たちの罵り合いの場となった。
そこには記者クラブ側の巧妙な仕掛けが施されていた。完全オープンな記者会見を主催する自由報道協会代表の上杉隆氏が、鉢呂芳雄前経産相を辞任に追い込んだ「死の町」発言の裏事情を解説する。
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記者クラブの悪質な情報操作の手口が次々と露呈している。小沢氏や堀江貴文氏といった記者クラブの「敵」を、これまで新聞・テレビがいかに「人物破壊」してきたか、いよいよ国民も気付き始めている。
典型的なのが、鉢呂吉雄前経産相の辞任である。
鉢呂氏は、「死の町」発言と「放射能つけちゃうぞ」発言の“合わせ技一本”で辞任に追い込まれたが、実は福島の住民たちは「死の町」発言に怒っていない。大多数は「本当のことを認めてくれた」と肯定しているのだ。警戒区域内の牛を保護しているエム牧場浪江農場長・吉沢正己氏は自由報道協会の会見で、「『死の町』という表現があったがその通りだ。絶望の町と捉えている」と述べた。
「放射能つけちゃうぞ」発言にいたっては、完全に新聞・テレビの捏造である。鉢呂氏はそもそも「放射能」という言葉を使っていない。福島からの帰りで防護服姿だったため、記者から「放射能付いているんじゃないですか?」といわれ、近づいただけだ。そのやり取りに記者も笑っていたという。実は記者の1人がICレコーダーで録音していたから、その気になれば真相は検証できるはずだが、そうした報道はない。これが、各紙バラバラだった「放射能」発言の真相である。
つまり、本来なら二つとも問題にならない言動だったのだ。それなのに、なぜ彼は辞任に追い込まれたのか。鉢呂氏は、私が司会を務めるCS朝日ニュースター『ニュースの深層』(10月11日放送)に出演し、「外部から入るのは記者クラブメディアからの情報だけで、それ以外に(自分の発言に)賛同する声もあったことは辞任してから知った」と、後悔の念を口にした。
鉢呂氏は福島第一原発周辺の放射線量を年間1ミリシーベルトへ下げる除染作業を提唱し、経産省の原子力行政改革にも意欲的だった。原子力ムラにしがみつく官僚とメディアは、情報操作によって鉢呂氏を「辞任」に追い込んだのだ。
その後釜に座ったのが、官房長官として原発事故対応に失敗した枝野幸男氏というのは、何とも皮肉な話だ。つまりこれは、「『死の町』を認めた男と作った男」の交代劇だったのである。
※週刊ポスト2011年10月28日号