島田紳助の騒動は、多くの人に芸能界と暴力団の“切っても切れない関係”を再確認させた。なぜ両者は深く付き合うのか。芸能人にとってどんなメリットがあるのか。ノンフィクションライターの窪田順生氏が解説する。
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たとえば、日本レコード大賞をとったこともある大物男性シンガーは、稲川会の新年会で熱唱し、会長の葬儀にまで参列している。
個人的な付き合いだと説明はするが、宴の場で、会長の妻を「お母さん」と呼ぶその姿は、盃をもらっていると言われてもまったく違和感がない。
このような「親密すぎる交際」は、彼らにどのようなメリットをもたらすのだろうか。
「芸能人は有名になればなるほど因縁をつけられたり、トラブルに巻き込まれたりすることが本当に多い。プライベートだったりすると、事務所としても守れない。そこで、組の名前が出せるというのは心強いので関係を持ってしまう」(芸能事務所社員)
ビートたけしが、右翼団体からの抗議を受け、誰に頼ることなく暴力団の会長のもとを訪れて土下座したことを週刊誌で明かしたが、芸能人の多くは、このような窮地で、つい“力をもつ者”に頼ってしまうのだ。
一方で、暴力団側はどんなメリットがあるのか。関東の某広域組織幹部が明かす。
「ヤクザは人脈でメシを食っているところがあるので有名芸能人のトラブルを解決したというのは、組織内でも自分の力を誇示することができる。商売の話をしていても、有名芸能人と付き合いがあると言えば信用も増す。要するに知名度を利用している」
それゆえ、自分の仲間に因縁をつけさせて、そ知らぬ顔で仲介役にのりだす「自作自演」で、芸能人とパイプを持とうと目論む輩もいる。
このような話を聞くと、一つの疑問が浮かぶ。ヤクザといえば「縄張り争い」のイメージが強いが、異なる代紋を「ケツ持ち」としている芸能人同士でトラブルがあった場合、どのような解決方法が取られるのか。暴力団に詳しいジャーナリストはこう言う。
「芸能界のケツ持ちには“シマ争い”のような概念はない。もし組同士で利害が衝突するような場合は、互いの組織に顔がきく“相談役”と呼ばれる人物が仲介に立って丸くおさめるのが一般的だ」
ちなみに、(紳助騒動で“Aさん”として名前の挙がった)元プロボクサーの渡辺二郎氏の肩書も、「山口組極心連合会 相談役」だ。
※SAPIO2011年10月26日号