竹下正己弁護士の法律相談コーナー。今回は「マンションの上の住人宅からの漏水で被害が出たのですが、とりあってくれません」と以下のような質問が寄せられた。
【質問】
マンションの1階に住んでいますが、天井と壁に水が漏れ、家財に被害が出ました。2階の住人宅が漏水の原因を作ったと思われますが、2階の住人は私の苦情をとりあってくれません。このような場合、どのように対応するのがよいでしょうか。アドバイスをお願いします。
【回答】
賃貸か分譲マンションかで対応が変わりますが、漏水の原因が、例えば風呂の水をあふれさせたなど、2階の住人の不注意による場合には、不法行為として住民に賠償を請求できます。しかし、給排水管の不具合で漏水が起きた場合など、施設が原因の場合は違ってきます。
賃貸マンションであれば、これらの施設は大家が管理して、必要な修繕をすべきです。大家は、一定の居住環境で使用できるようにメンテナンスを行なう義務があり、2階の給排水管からの漏水は、1階使用者の障害になるので、修繕義務違反として大家に賠償請求できます。
施設にまったく支障がなく、もっぱら2階の住人の行為で発生した場合は大家に責任追及できませんが、居室に漏水の汚れや湿気などが残って、居住に支障がある場合にはその補修を請求できます。また、責任を認めないような賃借人が居住を継続し、周囲に迷惑をかけるとすれば、そのような住民を放置すること自体が大家の義務違反になる場合もあります。
分譲マンションの給排水管が原因の場合、その場所により取り扱いが違ってくる可能性があります。これはマンションの管理規約などで決まっていると思いますので確認してください。2階居住者に管理責任がある範囲で起きた漏水が原因であれば、大地震などの不可抗力である場合を除いて、責任は2階住民にあります。
躯体内部の配管の漏水が原因であればもちろん、原因不明の場合も共用部分の瑕疵と考えられ、管理組合の責任になります。管理業務を業者に依頼していたり、マンション保険に入っている場合は、管理組合が業者や保険会社と交渉することになるでしょう。
まずは原因確認が必要です。賃貸なら大家に、分譲なら管理組合の責任者や管理会社担当者に調査するよう求めてください。
※週刊ポスト2011年10月28日号