過去248人が学び、総理以下38人の国会議員を生んだ松下政経塾間。第25期生の東京都議会議員・松下玲子氏に、作家の山藤章一郎氏が松下政経塾について尋ねた。
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サッポロビール→早大大学院→33歳で〈松下政経塾〉。
同期8人。うち7人が社会人。
「野田先輩とか、みなさん同じ釜の飯という意識です。党派はちがってもエールを送ってくれます。でもなかには、フフフ、おもしろい人もいます。〈PHP〉の代表だった江口克彦さんなんか。私たちの卒塾式の謝恩会で、祝辞のはずが、30分近くさんざ文句言って。最後に、『こんな式出てられるか』って。
私は右ではなく左っぽい人間ですけど、よく採ってくれましたね。そういう度量の広いところもあるのも、またおもしろいでしょ。好きな政治家を訊かれて、社会福祉を勉強したかったので、福島瑞穂さんと答えたんですよ」
――どんな人が合格するのですか。
「塾に入ると先輩の国会議員、大臣、自衛隊の幹部候補生や大使館の人とのディスカッションなど、貴重な機会に恵まれます。すると、急に、何者かになったように勘違いする人がいる。そうならない人を採用する、ということかもしれません。あとは松下幸之助さんのいう『運と愛嬌』」
〈塾〉には、繁栄幸福、平和に貢献しようという〈塾是〉。自修自得で日々新たな生成発展に向かおうという〈塾訓〉のほか〈五誓〉がある。
「志を最後まで貫こう、他を頼りにせず、なにごとも学ぶ気持ちで、創造開拓し、みんなに感謝して協力しあおう」という五つの誓いである。
野田佳彦塾員、前原誠司塾員、玄葉光一郎塾員、毎朝、8時45分に、これを唱えた。
4年間、月々25万円の〈研究費〉をもらいながら学ぶ寮生活である。寮は4人部屋。まん中に、8畳の和室があり、ちゃぶ台とテレビが置かれ、ひとつのドア、風呂、便所を共用する。
この共同和室を、6畳ほどの部屋が4つ取り囲んでいる。開塾当時は1学年30人の5学年で、150人の部屋が必要だった。だがいまは深刻な財政難で塾生を減らし、部屋は余っている。
第28期生の参議院議員・宇都隆史氏。「私はひとりで2部屋を使ってました。〈塾〉はもともと収益をめざす事業ではなく、外貨運用益で成ってきました。いま運営は憂慮すべき状況のようです」
4年研修。前半の2年は基礎課程。林の伐採などの現場研修から剣道、安全保障セミナー、近現代史、までみっちり学ぶ。あとの2年は、実践課程という。各自の持つテーマを現地現場で掘り下げる活動に励む。成果と将来の計画は、塾OB、外部有識者に審査される。最後に、国家経営のビジョンを提言して卒塾となる。
※週刊ポスト2011年10月28日号