モノが溢れる現代に巻き起こっている片づけブーム。老いる前に老後の生き方を考え、「本当に必要なモノ」だけを厳選して残そう、と提唱して注目されているのが「老前整理」だ。その提唱者である坂岡洋子氏(くらしかる代表)に、中高年男性の「老前整理」についてアドバイスしてもらった。
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●始めるベストのタイミング
まず、「老前整理」を行なうタイミングはいつが相応しいのか。
「人生の大きな区切りを迎えた時がお勧めです。必然的にこの先の人生について考えますから。例えば、定年を迎えた時、子供が独立して家を出た時、還暦を迎えた時など。こうした時にライフスタイルを変え、モノの整理を行なうと、今までと違う新たな人生をスタートさせることができます」
ちなみに、坂岡氏によれば、女性は男性よりも現実的で堅実なので、まだ老いが遠い50代の早いうち、人によっては40代のうちから老後の人生を考えて「老前整理」の必要性を感じ、夫を促すことが多い。夫の反応が鈍いと苛立ちを覚える。こうした男女の意識の違いについて理解しておくことで、夫婦間のトラブルを避けられる。
●楽しく作業するための工夫
「老前整理」をする人に坂岡氏が勧めているのが、カレンダーの、整理をした日のところにシールを貼ること。
「子供の頃、朝のラジオ体操に出席した時にカードにハンコを押してもらったのと同じように、整理をした日がひと目でわかるように工夫をしてください。シールの数が多いと嬉しいし、少ないと頑張ろうという気持ちになります。特に今の50代、60代の人は子供の頃にそういうことをやってきたので、馴染みのある方法だと思います」
●「使う」と「使える」の違いを理解する
モノを整理する時に、これは「使える」から取っておこう、「使えない」から捨てようと考える人が多い。だが、「使える」ことと「使う」ことはイコールではない、と坂岡氏は話す。
「例えば、数年前に買った電気ストーブがあるとします。壊れていないので、まだ『使える』ものです。しかし、今年の冬は新しいファンヒーターを買うので、もう『使う』ことはなくなります。ならば、捨てるなり、必要とする人に譲るなり、リサイクルショップに売るなりした方がいい。なのに、『使える』から残すと、モノは増えていく一方です」
※週刊ポスト2011年10月28日号