最新の総務省家計調査によると、震災後の3か月間に1家庭が寄付した金額は、平均で4291円。例年より10倍近くも多かった。一時は、まだ被災者に届いていないと非難された義援金も相当額が行き渡っているようだ。しかし、被災地で話を聞いてみると、「助かりました」という言葉の一方で、いまだ戸惑い、落胆は続いていた…。
福島県南相馬市にある6畳2間のアパート。ここに暮らす松本深さん(77)、芳子さん(72)夫妻は、引っ越しのとき義援金が役に立ったという。
「義援金としてもらったのは全部で43万円。カーテン、食器棚、レンジ台、トースターなどを買って全額使い切りました。大変助かりましたよ」(芳子さん)
松本さん夫妻は、もともと同じ南相馬市の小高区にある一戸建てに住んでいた。しかし、福島第一原発から20km圏内にあったため、3月12日から避難。いくつかの避難所を転々とした後、7月にようやく見つけた新居がいまのアパートだ。
義援金がつないでくれた縁もあった。
「家具を買うとき、最初はアパートの近くのリサイクルショップですませようと思っていました。でも、思い直して、地元の個人経営の店に頼むことにしたんです。温かい支援でもらったお金ですから、節約するよりも、助け合いになる使い方をしたかったんです」(芳子さん)
震災前からしばらく連絡をとっていなかったため、電話でまずお互いの無事を確認。その後、注文した家具をアパートまで車で運んでもらい、結果的に少しおまけしてもらえることにもなった。
義援金は、被災地の経済活動を活性化させる役割も果たしているのだ。被災地を取材すると、ほかにも義援金に感謝する声が多数聞こえてきた。
だが、もちろん、すべてがスムーズにいったわけではない。
宮城県仙台市の瀬谷学さん(35)は、2200万円で購入した新築一戸建てが津波に襲われて全壊状態に。入居してわずか1か月後の出来事だった。
「義援金で100万円、これとは別に市から住宅再建の助成で200万円をいただきました。しかし、家のリフォーム代に650万円かかり、家財道具もほとんど買わなければなりません」(瀬谷さん)
住宅ローンも全額残っている。リフォームが済むまでに10か月ほどかかるため、現在は妻(35)、長女(5)、次女(3)と仮設住宅で暮らしている。
「義援金をもらえることは大変うれしいんです。でも、見えない部分が多くて、不安な気持ちになったのも事実です。義援金を市に申請したのは5月ですが、担当者からは“具体的な金額はまだ決まっていない”といわれました。そして、義援金が口座に振り込まれたのが1か月後の6月。待たされている間、“申請が多すぎて10分の1に減るらしい”とか“もっと増えるらしい”とか噂が飛び交いました」(瀬谷さん)
※女性セブン2011年11月3日号