リビアのカダフィ大佐が死んだことで中東・アフリカの民主化運動である“アラブの春”は一つのクライマックスを迎えたが、その陰で脅えているのは北朝鮮の金正日総書記や後継者の金正恩氏だろう。しかしそんな金父子の贅沢ぶりが次々に明らかになっている。
アメリカの朝鮮半島問題専門家が昨年10月に行なわれた朝鮮労働党65周年記念の閲兵式に出席した正恩氏の映像を分析した結果、正恩氏が身に付けていた腕時計はスイスの高級時計メーカー、パテック・フィリップ社の『カラトラバ5118P-001』であることを突き止めた。販売価格は約770万円といわれる。
父親の金総書記もフランスから高級ワインやブランデーを取り寄せたり、衣服も最高級ブランド品を好むといわれており、息子の正恩氏のブランド好きも父親譲りといえそうだ。
韓国の情報機関が米軍から提供された平壌市内の衛星写真を調べたところでは、正恩氏の母親で、2004年に死亡した高英姫さんの豪邸が改装されて正恩氏の執務室兼邸宅として建て替えられていた。この豪邸は金総書記の官邸と地下トンネルでつながっていることが分かっており、正恩氏の後継体制が着々と進んでいることがうかがえる。この豪邸の建設費は約126億円にも上るという。
さらに、最近判明したのが北朝鮮北東部、江原道の元山に、正恩氏専用の別荘が新築されたことだ。この別荘は床のタイルをイタリアやドイツから取り寄せるなど豪華なつくりだ。魚類が好きな正恩氏のために水族館も特別に建設され、イルカショーを行なうために中国から4頭のイルカを購入、維持費だけで年間数千万円に達するという。
父親の金正日総書記も犬やネコ、オウムなどのペットを飼っている。毎年、フランスやスイスなどからシェパードやシーズー犬などを購入。ペットの犬やネコなどのために、フランスから獣医を呼び寄せており、その購入費やえさ代、医療費などで年間数千万円を費やしていることが分かっている。
金総書記の別荘で行われたパーティに出席した人物によると、突然小さな白い犬が飛び出してくると、すぐに犬を追っかける金総書記が姿を現した。犬はパーティ会場を自由に走り回り、金総書記は足元に来た犬を何度もなでていた。金総書記は犬を連れて地方視察を行なうこともあるというほどの犬好きだ。
米政府の北朝鮮問題専門家によると、北朝鮮は2008年の1年間で、金総書記らロイヤルファミリーのための高級酒や高級車などのぜいたく品の輸入に1億ドル(約77億円)以上を費やしている。
ところが、ファミリーのためには金を惜しまない金総書記も下々のためにはとたんに“質素”になるようだ。昨年9月の党代表者会に出席した党幹部に対する金総書記の贈り物は中古の中国製カラーテレビだったという。実は、このカラーテレビは贈られる際、「新品」だといわれたのだが、受け取った幹部がテレビを見ている時に故障し、「将軍さまからの贈り物を壊しては恐れ多い」というわけで、慌てて電器店で修理してもらったところ、内部の部品などから「中国製の中古品」であることが判明したという。
その一方で、北朝鮮の対南窓口機関「祖国平和統一委員会」のウエブサイトに「金正日逆徒と息子金正恩を追い出して新しい世の中を作ろう」などと金父子を激しく誹謗する書き込みが掲載され、接続不能の状態になる事件も起きている。北朝鮮当局は、犯人捜しに躍起になっているが、多数の餓死者が出ているといわれる北朝鮮だけに、国民の不満は極限まで高まっているのは間違いない。