国内

世田谷放射能騒動 92歳女性は健康だったが驚くことではない

東京都世田谷区の民家で見つかった「放射能ビン」騒動は、当初、“東京ですごいホットスポットが見つかった”と、市民運動家や反原発団体を大騒ぎさせた。

市民団体の調査がきっかけで、民家前の道路で最大3.35マイクロシーベルト/時の放射線が計測され、民家敷地内では8.4(同)、壁面で18.6(同)という高線量も検出された。

原因は床下に保管されていた放射性ラジウムの入ったビンで、夜光塗料の原料だったと推定されている。

この騒ぎはいくつかの示唆的な教訓を残した。

第一に、相変わらず「高濃度」「基準を上回る」「通常の○倍」といった、国民にはほとんど意味のない修飾語をつけて報じる大マスコミの勉強不足である。

本誌・週刊ポストは何度も書いたが、改めてここで、最低限知っておくべき「危険な被曝か、そうでないかの判断基準」を記す。

一般のニュースで使われる「マイクロシーベルト/時」という空間線量率を表わす単位から、自分がどれだけ被曝するかを求めるには、その場所に居続けたと仮定して、「8.766」を掛けると「年間被曝量」を「ミリシーベルト」で知ることができる。

今回の場合、この道路に居続けた場合の年間被曝量は、3.35×8.766=29.3661ミリシーベルトになる。

安全な被曝量は「年間1ミリシーベルト以下」とされるから、30ミリ近く被曝することは問題である。ただし、この場所に24時間365日、居続ける人はいない。毎日この道を通り、行きも帰りも必ず1分間立ち止まるとしても、年間被曝量は約0.04ミリにすぎない。これは胸のレントゲン検査1回分程度の被曝量であり、もちろん安全基準上限を十分に下回る。

ちなみに、この民家に暮らしていた老女は、50年以上にわたり、推定で年間30ミリの被曝をし続けたとみられるが、90歳を超えて健在で、がんにもかかっていないそうだ。

これも本誌は何度も報じたことだが、「年間1ミリ」という基準は、自然放射線(世界平均で年間2.4ミリ)や医療放射線(日本人の平均で年間2.3ミリ)を除いた被曝量の「望ましい値」である。実際には自然放射線が年間10ミリを超える地域もあるし、宇宙線を多く浴びるパイロットのように、職業によって年間5ミリ程度の被曝をする者もたくさんいる。

それらの人たちへの疫学調査により、がん発生率や遺伝的異常の増加が見つかった例は世界に一つもない。だから、年間30ミリを浴び続けた老女がいたって健康でも、何ら驚くことではない。

※週刊ポスト2011年11月4日号

関連キーワード

トピックス

船体の色と合わせて、ブルーのスーツで進水式に臨まれた(2025年3月、神奈川県横浜市 写真/JMPA)
愛子さま 海外のプリンセスたちからオファー殺到のなか、日本赤十字社で「渾身の初仕事」が完了 担当する情報誌が発行される
女性セブン
MajiでFukkiする5秒前(時事通信フォト)
2年ぶり地上波登場の広末涼子、女優復帰は「過激ドラマ」か 制作サイドも“いまの彼女ならなら受けるのでは”と期待、“演じることにかつてなく貪欲になっている”の声も
週刊ポスト
YouTubeでも人気を集めるトレバー・バウアー
【インタビュー】横浜DeNAベイスターズ、トレバー・バウアー「100マイルを投げて沢村賞を獲る」「YouTubeは第2の人生に向けての土台作り」
週刊ポスト
ドバイの路上で重傷を負った状態で発見されたウクライナ国籍のインフルエンサーであるマリア・コバルチュク(20)さん
《ドバイの路上で脊椎が折れて血まみれで…》行方不明のウクライナ美女インフルエンサー(20)が発見、“危なすぎる人身売買パーティー”に参加か
NEWSポストセブン
旧統一教会は今後どう動くのか(時事通信フォト)
解散命令を受けた旧統一教会 「自民党への復縁工作」もありうると鈴木エイト氏指摘、教団と議員の関係を示す新情報リークの可能性 石破首相も過去に接点
週刊ポスト
藤川新監督(左、時事通信フォト)の船出とともに、名物商店街にも大きな変化が
阪神「日本一早いマジック点灯」のボードが電光掲示板になっていた! 名物商店街が今季から「勝った翌日に減らす」方式を変更 貼り替え役の店長は「ようやく解放される」と安堵
NEWSポストセブン
公開された中国「無印良品」の広告では金城武の近影が(Weiboより)
《金城武が4年ぶりに近影公開》白Tに青シャツ姿の佇まいに「まったく老けていない…」と中華圏のメディアで反響
NEWSポストセブン
女子ゴルフ界をざわつかせる不倫問題(写真:イメージマート)
“トリプルボギー不倫”で揺れる女子ゴルフ界で新たな不倫騒動 若手女子プロがプロアマで知り合った男性と不倫、損害賠償を支払わずトラブルに 「主催者推薦」でのツアー出場を問題視する声も
週刊ポスト
すき家の「クチコミ」が騒動に(時事通信、提供元はゼンショーホールディングス)
【“ネズミ味噌汁”問題】すき家が「2か月間公表しなかった理由」を正式回答 クルーは「“混入”ニュースで初めて知った」
NEWSポストセブン
本格的な活動再開の動きをみせる後藤久美子
後藤久美子、本格的な活動再開の動き プロボクサーを目指す次男とともに“日本を拠点”のプラン浮上 「国民的美少女コンテスト」復活で審査員を務める可能性も 
女性セブン
スシローから広告がされていた鶴瓶
《笑福亭鶴瓶の収まらぬ静かな怒り》スシローからCM契約の延長打診も“更新拒否” 中居正広氏のBBQパーティー余波で広告削除の経緯
NEWSポストセブン
すき家がネズミ混入を認める(左・時事通信フォト、右・HPより 写真はいずれも当該の店舗、スタッフではありません)
《丸ごとネズミ混入》「すき家」公式声明に現役クルーが違和感を覚えた点とは 広報部は「鍋に混入した可能性は著しく低い」と回答
NEWSポストセブン