東京・世田谷の民家で高放射線量が計測された問題は、家の下に放射性のラジウムの入った瓶が置かれていたことが原因だった。実は、原発由来でなくても放射性物質は身の周りにいくらでも存在している。
今回の「放射能ビン」はそんなに特殊なケースではないかもしれない。夜光塗料の原料だったと推定されているわけだが、放射性物質を使った夜光塗料は、ほんの20年くらい前まで腕時計の文字盤などに平気で使われていたからだ。
もちろん今回のように原料そのものが高濃度、多量に集められている環境は多くないはずだし、放射能が強いラジウムを使う塗料は、「少なくとも我が国では1957年に放射線障害防止法が施行されて以降は使われていない。
その後は放射能の弱いプロメチウムなどに切り替えた」(セイコーウオッチ広報宣伝部)。さらに、1990年代以降は放射性物質を使わない塗料が開発され、現在はそうした製品は流通していない。
ただし、それまでは時計の文字盤だけでなく、常備灯や避難誘導の目印、さらに「光るおもちゃ」などにも放射性夜光塗料が普通に使われていた。現代の放射能ノイローゼ気味の母親たちが聞けば卒倒しそうな話だが、当然のことながらその程度の放射性物質が家の中にあっても、万が一、赤ん坊が口に入れても、健康被害は起きない。
※週刊ポスト2011年11月4日号