「もうあなたとセックスはしたくない」そう妻に告げられたら、あなたはどうする? セックスについて妻は、夫にいえない多くの悩みを抱えている。そんな男たちの知らない「性のタブー」に挑んだ10月19日にオンエアされたNHK『あさイチ』の『セックスレス 拒否する女性たち』という特集。妻たちの赤裸々な話は、男が見ると思わず居住まいを正さずにはおられない深刻なものだった。
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「あっ! あっ!」椅子に腰掛けていた有働由美子アナ(42)が、突然艶かしい声を上げた。一見なんの変哲もないこの椅子、実は膣を刺激する“膣トレーニング”の機械なのだという。
骨盤底のトレーニングがすなわち“膣トレ”で、「やわらかい骨盤底でいることが大事。鍛えていくとキュッと締められるようになる」(泌尿器科医・関口由紀医師)しかし、有働アナが自ら取材に出向いて体験したことに対しては、ネット上でも批判が殺到し、〈そこまでやるか〉と大炎上する騒ぎになった。
最終的に番組に寄せられたFAXやメールの数は前回を上回る2000通。〈あさイチ、よくぞこのテーマを取り上げてくれましたって感じです〉といったエールがある一方で、むしろ、
〈朝から取り上げるテーマにふさわしくないと思うのでとても不快です〉
〈夫婦間のデリケートな問題なので、他人に聞いてもらってどうこうする問題ではないと思うのですが〉
と否定的な意見のほうが多かった。それは公共の電波でセックスを扱うことの是非や悩みの深刻さ、問題意識の違いにもよるだろう。女性向けのアダルトグッズショップを経営する、コラムニストの北原みのり氏は次のように評価する。
「セックスというなぜかタブー視されていることに対して、堂々と話し合えるということが素晴らしいと思います。朝だから、とか、NHKだからというのは関係ないんじゃないですか」
作家の亀和田武氏も、
「本来ならば少し重い話題を、思い切ってやるというのが『あさイチ』の強さですね。視聴率や話題性を狙ったものではなく、真面目に女性の悩みを取り上げていることに好感が持てた」
とやはり肯定的。自ら実験台になった有働アナや、自らの体験を赤裸々に語った女性コメンテーターたちの熱意。そこには、決して興味本位ではなく、よりよい性のために、視聴者とともに、真剣に語り合おうとする姿勢が見られた。
さらに加えれば、批判を怖れずテレビ界の大きなタブーにあえて挑んで、現代社会の深刻な問題を取り上げた制作者、スタッフ、そして出演者の姿勢は、大半のテレビ番組がつまらなくなった現在でも、まだまだテレビの可能性を感じさせた一筋の光明に思えた。素直に拍手を送りたい。
NHKにはぜひ再放送を、そして続編の特集を期待する。
※週刊ポスト2011年11月4日号