警察組織と暴力団のせめぎ合いは水面下で激化している。ジャーナリスト・伊藤博敏氏が、暴力団排除条例の全国施行から1か月が経とうとする中、芸能界にどんな動きがあるのかを報告する。
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暴力団排除条例を担当する警視庁組織犯罪対策3課が、対応に追われている。
警察庁幹部の解説。
「まず彼らは、暴排条例適用第1号に相応しい目立つ案件を手がけなければならない。その他、暴力団と親しい芸能人などが『私は大丈夫でしょうか』と、相談にくるのに対応したり、企業はもちろん警視庁の他の部署からの問い合わせに応じてもいる」
島田紳助の引退で“破壊力”を見せつけた暴排条例だが、「暴力団と付き合ってはいけません」といっても、その範囲が明確ではない。
ことに組対3課が「芸能班」を組織、「第1号案件は、芸能プロダクションの代表か大物芸能人」と観測されているだけに、「暴力団が関係する興行に行って歌うのはアウトか」「一緒に酒を呑んだだけでもダメなのか」と、暴力団とのつきあいが生じやすい芸能界には戸惑いが広がっている。
夏になると大活躍するJポップ界の大物歌手は、警視庁に赴いて、過去の暴力団との関係を告白、「縁切り」を宣言したという。うまい「対処法」である。
「東西の暴力団幹部と交遊、組対3課が目をつける存在でした。でも、条例なので摘発ではなく、関係遮断が目的です。まず、『密接交際者』と認定、次に関係を断つように勧告、従わなければ名前を公表して社会的制裁を加えます。その機先を制してカミングアウトされたら、認定もできない」(警視庁関係者)
もちろん絶縁が「偽装」であることが発覚したら、制裁はより厳しくなる。いきなり名前が公表されて、テレビ出演は不可能になり、会場が借りられずにコンサート活動も中断、歌手廃業に追い込まれる可能性もある。
※SAPIO2011年11月16日号