ライフ

サーチュイン遺伝子をオンにすれば平均寿命130才も可能か?

「サーチュイン遺伝子」という聞き慣れない言葉が、いまアンチエイジング界で大きな注目を集めている。火付け役となったのは、今年6月12日に放送された『NHKスペシャル あなたの寿命は延ばせる ~発見! 長寿遺伝子~』。

 この番組では、アメリカの最新研究で、人間を含む多くの生物の体内に、長寿を司る「サーチュイン遺伝子」が発見されたことを報告。この“長寿遺伝子”は、普段は“スイッチオフ”の状態になっているが、ある働きかけにより“スイッチオン”の状態にすると、実に100種類にも及ぶ体内の老化を抑えるという。

 アンチエイジング医学の最先端、ハーバード大学医学部でこの遺伝子を研究する根来秀行客員教授が解説する。

「老化は体全体のDNAが傷つくことによって進行しますが、サーチュイン遺伝子はこれを防ぐ役割を果たします。具体的には、細胞内でエネルギーをつくっているミトコンドリアを増やしたり、細胞の自然死である“アポトーシス”を抑制したりするのです」

 では、サーチュイン遺伝子のスイッチをオンにするにはどうしたらいいのか? 体にはどんな効果が表れるのか。

 そもそも、サーチュイン遺伝子が初めて見つかったのは2000年。米マサチューセッツ工科大学のレオナルド・ガレンテ博士らが、酵母菌から発見した。その後、線虫やハエにもサーチュイン遺伝子が確認され、いまでは人間を含む多くの生物に存在することがわかっている。

 この遺伝子のスイッチをオンにする代表的な方法は、なんと「カロリー制限」だという。軽い飢餓状態を作り出し、細胞にちょっとしたストレスを与える。すると、それまで眠っていたサーチュイン遺伝子が“目覚め”、老化に対抗する働きをするのだ。

「アカゲザルに、普段よりカロリーを30%カットしたエサを20年以上与え続けた実験で、カロリー制限をされたサルは他のサルより平均で数年長生きし、毛並みや肌つやもより若々しくなりました」(根来さん)

 カロリー制限がなぜサーチュイン遺伝子を目覚めさせるか、理由は明らかになってないが、研究では、他の生物や動物でも、サーチュイン遺伝子を活性化させると1.4~2倍ほど寿命が延びることが確認された。人間の寿命を延ばすという研究結果はまだないが、もし他の動物と同じような効果が得られれば、平均寿命130才の時代がやってくるかもしれない。

 順天堂大学大学院医学研究科・加齢制御医学講座教授の白澤卓二さんは、こう話す。

「サーチュイン遺伝子は脂肪生成を抑えて脂質の代謝を促すので、肥満防止にもつながります」

 カロリー制限に加え、脂肪の代謝も促されるようになり、相乗効果のダイエットが期待できる。では、そのカロリー制限はどれぐらい続ければ、よいのだろうか。

「動物実験ではカロリー制限を30~60日続けるとサーチュイン遺伝子が目覚めることがわかっています。サーチュイン遺伝子がオンになった後も、カロリー制限を続けることが重要。やめてしまうと、再びオフになってしまいます」(白澤さん)

 とはいえ、「ずっとカロリー30%制限を続けるのはしんどい」という人も多いだろうが、カロリー制限以外でサーチュイン遺伝子を手軽にオンにする方法に、レスベラトロールという植物成分を摂取する方法もある。

※女性セブン2011年11月10日号

関連記事

トピックス

11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(右/読者提供)
【足立区11人死傷】「ドーンという音で3メートル吹き飛んだ」“ブレーキ痕なき事故”の生々しい目撃談、28歳被害女性は「とても、とても親切な人だった」と同居人語る
NEWSポストセブン
愛子さま(写真/共同通信社)
《中国とASEAN諸国との関係に楔を打つ第一歩》愛子さま、初の海外公務「ラオス訪問」に秘められていた外交戦略
週刊ポスト
グラビア界の「きれいなお姉さん」として確固たる地位を固めた斉藤里奈
「グラビアに抵抗あり」でも初挑戦で「現場の熱量に驚愕」 元ミスマガ・斉藤里奈が努力でつかんだ「声のお仕事」
NEWSポストセブン
「アスレジャー」の服装でディズニーワールドを訪れた女性が物議に(時事通信フォト、TikTokより)
《米・ディズニーではトラブルに》公共の場で“タイトなレギンス”を普段使いする女性に賛否…“なぜ局部の形が丸見えな服を着るのか” 米セレブを中心にトレンド化する「アスレジャー」とは
NEWSポストセブン
日本体育大学は2026年正月2日・3日に78年連続78回目の箱根駅伝を走る(写真は2025年正月の復路ゴール。撮影/黒石あみ<小学館>)
箱根駅伝「78年連続」本戦出場を決めた日体大の“黄金期”を支えた名ランナー「大塚正美伝説」〈1〉「ちくしょう」と思った8区の区間記録は15年間破られなかった
週刊ポスト
「高市答弁」に関する大新聞の報じ方に疑問の声が噴出(時事通信フォト)
《消された「認定なら武力行使も」の文字》朝日新聞が高市首相答弁報道を“しれっと修正”疑惑 日中問題の火種になっても訂正記事を出さない姿勢に疑問噴出
週刊ポスト
地元コーヒーイベントで伊東市前市長・田久保真紀氏は何をしていたのか(時事通信フォト)
《シークレットゲストとして登場》伊東市前市長・田久保真紀氏、市長選出馬表明直後に地元コーヒーイベントで「田久保まきオリジナルブレンド」を“手売り”の思惑
週刊ポスト
ラオスへの公式訪問を終えた愛子さま(2025年11月、ラオス。撮影/横田紋子)
《愛子さまがラオスを訪問》熱心なご準備の成果が発揮された、国家主席への“とっさの回答” 自然体で飾らぬ姿は現地の人々の感動を呼んだ 
女性セブン
26日午後、香港の高層集合住宅で火災が発生した(時事通信フォト)
《日本のタワマンは大丈夫か?》香港・高層マンション大規模火災で80人超が死亡、住民からあがっていた「タバコの不始末」懸念する声【日本での発生リスクを専門家が解説】
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「金の無心をする時にのみ連絡」「断ると腕にしがみついて…」山上徹也被告の妹が証言した“母へのリアルな感情”と“家庭への絶望”【安倍元首相銃撃事件・公判】
NEWSポストセブン
被害者の女性と”関係のもつれ”があったのか...
《赤坂ライブハウス殺人未遂》「長男としてのプレッシャーもあったのかも」陸上自衛官・大津陽一郎容疑者の “恵まれた生育環境”、不倫が信じられない「家族仲のよさ」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 習近平をつけ上がらせた「12人の媚中政治家」ほか
「週刊ポスト」本日発売! 習近平をつけ上がらせた「12人の媚中政治家」ほか
NEWSポストセブン