暴力団に企業への「対策」として、警察OBが民間企業に「再就職」する例もあるが、本誌が入手した、警察庁OBの過去2年間(08年12月31日~11年3月31日)の「再就職リスト」によると、民間企業への再就職は「キャリア組」では日本生命、清水建設など、「地方警務官組」(注)ではシャープ、キヤノン、福岡ソフトバンクホークスや東京電力柏崎刈羽原発など計258件にのぼった。
こうした大手が警察OBを雇用する一方で、警察OBを受け入れる余裕がない中小企業やサービス業では、現職警官とのパイプを太くしているという。大阪府警の現役刑事が語る。
「今年4月以降、ゴルフ場から『うちなら超格安料金で警察署のコンペを開けるよ』と誘いを受けることが多くて困っとるんや。聞くと、ようは警察が出入りしていることを暴力団にアピールしたいらしいんです。一般人との会合でも以前より優しくされとる気がしますわ(笑い)」
一方で、みかじめ料を渡す相手が暴力団から警察官へ移っただけと語る飲食店経営者もいる。大阪随一の歓楽街ミナミでは、飲食店オーナーはこう戸惑った。
「暴力団が来うへんようになった代わりにポリさんがよう顔をだすようになったんです。さすがに制服で来ることはないけれど、“なんか困ったことはないか”と直接、店にまで廻ってくるんです。
お礼代わりに料金をサービスしていたんですが、あまりにも来る回数が多くてね(笑い)。月6回も来るようになると、うちみたいな安い店だと結構きつくなりますね。他のオーナーも同じようなこといっていて、『無料で飲食を提供したら贈収賄になるから、ワンコイン(500円)で食べ放題にしとる』と語ってました。警察官からサービスを要求されることはない。あくまで、こちらの気づかいなんやけど、なんか、みかじめ料やタオル代とそうは変わらん気がするね」
“暴力装置”を背景にみかじめ料の徴収や覚せい剤販売などを働く暴力団を排除するのは、“国家の正義”として至極まっとうなことである。また警察OBを雇用することで安心が得られるなら結構なことだし、みかじめ料などのアングラマネーが膨張することを防止するのも重要だ。しかし、行き過ぎはよくない。
注/都道府県警察の職員のうち警視正以上の階級のもの(国家公務員)
※週刊ポスト2011年11月4日号