野田内閣が推し進める増税と年金支給年齢の引き上げ。閣議了解された『社会保障と税の一体改革案』では、現在65歳の年金支給開始年齢を「68~70歳」へ引き上げることが盛り込まれた。
もし、年金財政がそれほど逼迫しているというなら、厚労省には70歳支給の前にやるべきことがある。
未納保険料の徴収だ。
現在、国民年金の未納率は約41%に達し、全額免除者(約26%)を合わせると、対象者の3分の2は保険料を支払っていない。厚生年金にも、毎年10兆円もの徴収漏れがあるという。
元財務官僚の高橋洋一・嘉悦大学教授の指摘だ。
「国税庁に税務申告している法人数は全国276万社あるが、厚生年金の統計では事業所は173万社しかない。その差、100万社は厚生年金保険料を支払っていない。なかには社員の給料から保険料を天引き、国に納めない悪質なケースもある。その100万社から徴収すれば年間10兆円ほど保険料収入が増えると推計している。真っ先に取り組むべきです」
厚生年金の収入が年間10兆円増えれば、財政は大幅な黒字。支給アップや保険料値下げさえ可能になる。
しかし、年金官僚やねんきん機構(旧社保庁)職員は未納保険料の取り立てはアルバイトの非常勤にやらせ、本気で取り組もうとしていない。もともと自分のための制度だと思っているから、国民のために面倒なことなどやりたくないのだ。
※週刊ポスト2011年11月4日号