「おかわり君」こと中村剛也のホームランは、いつも、滞空時間の長い美しい放物線を描く。西武の中村は、今季48本のホームランを放ち、2年ぶりのホームラン王に輝いた。「おかわり君」とは一体、何者なのか。ただのぽっちゃりしたハニカミ屋なのか。ならばなぜ、彼だけがホームランを打てるのか。ルポライターの高川武将氏が本人に直撃した。
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中村に会ったのは9月下旬、既に45本塁打と一人旅を続けている頃のことだ。
――今季、なぜ自分だけ打てるのか、自己分析を。
「別になんもないんですけど……(笑)。まあ、ボールが飛ばないということを過剰に意識しないようにした、というのが大きいかなと。意識すると力んで、スイングにブレが出たりするので。前半はやっぱり、力が入っていたんで」
――意識しなくなったきっかけは?
「左手の甲に死球を受けて(6月4日、中日戦)、痛くてバットを握れない状態だったんですけど、次の試合でホームランを打ったとき右手一本で打ったような感覚で、右手で押し込む感覚を掴んで。で、月末の試合でドン詰まりがホームランになって。
詰まっても大丈夫なんだ、と。心の余裕、ですかね。それからはボールは関係なくなりました。今年に限っては、その死球がよかった……ま、痛かったですけど(笑)」
遠征先のホテルの一室、朴訥とした口調で話す中村は、終始ニコニコしていた。
――インタビューでポツリ、ポツリと話しますよね。
「苦手なんですよね、人前で喋ったりするのは。小さい頃から。野球は別ですけど……喋ることを考えるのが面倒くさい(笑)。ちょっと恥ずかしいですし……」
――太っていたことも関係していますか?
「太っていて嫌だと思ったことは全然ないです。動けたし……苛められたこともないですし、はい(笑)」
※週刊ポスト2011年11月11日号