加賀温泉郷の片山津温泉(石川県加賀市)では目下、市民を二分する「ソープ論争」が熱く戦わされている。
発端は今年1月、老舗高級ソープランド『重役室』が売春防止法違反容疑で摘発されたこと。そして9月末には県の公安委員会から「営業廃止」命令が下った。近所の商店主が声を潜めて語る。
「今まで何十年もOKだったのに、今になって突然NGになった。店の前につくられる温泉公園の影響なんだろうなァ」
現在、片山津では総事業費12億円をかけた市営温泉施設の建設が進んでいる。来年の開湯130年に合わせた街の整備計画の目玉で、4月に開業予定の『新総湯』だ。問題のソープは、新総湯の道路を挟んだ正面に位置する繁盛店だった。
「新しい片山津の顔の前にソープはダメということでしょう。近くにも別のソープがあるので、次はここが標的になるのではと噂されています」(同前)
危機感を覚えた地元飲食店や風俗店の出入り業者などは、今年6月、「ソープの営業継続」を求める嘆願書を出した。
「温泉街という特殊な状況を考えてほしい。反対派の市長は元大学教授らしいが、温泉街のことを何も知らないだけだ。割を食う業者も多く死活問題。地元業者だけでなく、大手飲料メーカーの営業マンも“ソープの売り上げが市内で上位”と個人的に署名してくれた」(住民有志で作る『片山津温泉の繁栄を願う会』のメンバー)
しかし、これに脱ソープ派は猛反発。
「温泉街とソープが共存共栄してきたのは認めるが、温泉にはソープ、という主張はもはや時代遅れだ。観光客も団体より個人の時代で、これからは女性客を積極的に呼び込まなければならない」(商店を中心にした『片山津地区まちづくり推進協議会』メンバー)
※週刊ポスト2011年11月11日号